fbpx

スー・チー人気で過熱する「日本のミャンマー投資」が失敗する理由=真殿達

周回遅れの日本。ミャンマー投資の陣取りゲームはすでに終わっている

なぜなら、陣取りゲームはもうほとんど終わっている。

正式には制裁に加わらなかったが、日本は、民間投資促進策やベーシックヒューマンニーズ支援を思いきって打ってこなかった。スー・チー女史への支援はしたかもしれないが、ミャンマー国民がいつまでも忘れない、誰も傘をさしてくれなかった時に日本だけはさしてくれた、というような支援を十分にはしてこなかった。

軍政であれ民政であれ、制裁下であれ正常時であれ、ミャンマー国民が忘れることのできないような大病院を建設し医療行為を無償供与するような支援を、突出してしてくるべきであったのだ。

政権交代とともに金を出すのは、「今さら」なのだ。

スー・チー政権誕生にご祝儀をいくら出したところで、旧宗主国イギリスや制裁を主導したアメリカに敵うはずはない。

制裁を無視して入り込んだ中国にも、そして早い段階からアメーバーのように地についた投資を行ってきたシンガポール等東南アジア資本にも、日本は勝てるはずがない。

ミャンマー投資は「額だけ大きい出涸らしのお茶」に

新規支援を行う前に過去の延滞債権もチャラにすることになろうが、この金だけで日本の支援のシンボルになるような病院は10も20も作ることができたはずだ。

これからの支援は先行国に対する周回遅れの提灯買いになるだけだ。2番煎じどころか4番5番煎じとなる。金額だけ大きい出涸らしのお茶になってしまう。

戦後長くビルマはマレーシア、台湾と並ぶアジアの3大親日国だった。欧米の後追いを繰り返すうちに、その親日度は薄れてなくなった。いわば歴史的無形資産を食いつぶしてしまったのだ。

筆者プロフィール:真殿達(まどのさとる)
国際協力銀行プロジェクトファイナンス部長、審議役等を経て麗澤大学教授。米国ベクテル社とディロン・リードのコンサルタント、東京電力顧問。国際コンサルティンググループ(株アイジック )を主催。資源開発を中心に海外プロジェクト問題への造詣深い。海外投資、国際政治、カントリーリスク問題に詳しい。

【関連】東芝に「審判の日」近づく。忍び寄る海外訴訟リスク、経営に致命傷も=真殿達

【関連】「パリ同時多発テロ」と「9.11テロ」の共通点と相違点~楽観的すぎる市場

【関連】米・中に踊らされる日本。複数のシンクタンクが見抜いたAIIBの真実

1 2

投資の視点』(2015年11月17日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

投資の視点

[無料 週刊]
「投資の視点」はより実践的な株式投資の力をつけるための講座に衣替えしました。真に投資の力をつけるには以下の3つの要件が必須です。(1)中立の立場(2)実務の専門家(講演の専門家ではない)(3)もれのない講座体系大手経済新聞社OBを中心に、ファンドマネージャー、チャーチスト、財務分析とポートフォリオ運用の専門家が集結してこれらの要件を満たす講座を立ち上げました。講座は「資産運用のブティック街」として、市場の切り口、テクニカル分析、企業の財務、ポートフォリオ戦略―の4つのテーマに整理・提供いたします。

いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー