日本ではマニアなら誰でも知っているカード「紐付け」
しかし、「スマホとクレジットカードを紐付ければ還元率がアップする」という仕組みはどこかで見た光景ではありませんか。
- Suicaにチャージする時にビューカードを使えば、JREポイントが通常0.5%のところ1.5%と3倍貯まる
- ペイペイにチャージするのにYahoo! JAPANカードを使えば、キャンペーン期間中なら19%還元がある
- 楽天ペイに楽天カードを組み合わせて買い物をすれば、通常0.5%のところ1.5%のポイントが付く
- nanacoは、セブンカードプラスからチャージするとポイントが付く
- WAONは、イオンカードセレクトからチャージするとポイントが付く
など、特定のクレジットカードを使ってQRコードや電子マネーにチャージすると、ポイントがついたり、還元率が2〜3倍に増えるというもので、これは日本人にはすっかりお馴染みのサービスです。
ただ、日本では当たり前のカードの特典なのですが、海外のクレジットカードでこうしたサービスを大々的にやっているということはあまり聞きません。それをアップルカードが、これから率先して、目玉のサービスとして、世界にばらまこうとしているのです。
これは日本人としては愉快なことではありませんか。喝采を叫びたくなるではありませんか。
スマホ決済の盟主を目指した周到な計画
今になって振り返ると、アップルは、この日が来ることを予想してApple Payの日本上陸に合わせて様々な手を打ってきたことがわかります。
彼らは何をしてきたのか。2017年に発行した拙著『Suicaが世界を制覇する』(朝日新書)に詳しく書きましたが、要点を以下に箇条書きにしてみました。
- 交通系電子マネーSuicaを押し立てて、Suicaファーストとして参入
- スマホ決済の盟主となるために国際ブランドVISAを排除してフリーハンドを得た
- 実務はiDとクイックペイのネットワークに任せた
- 日本のカード会社を調べて、アップル中心の幕藩体制を築こうとした
- 日本のクレジットカードサービスを徹底的に調べて今度のアップルカードの発行に備えた
アップルは、アップルベイの発行を通じて日本のクレジットカード業界のあらゆるノウハウを学習し体得したと言えるでしょう。
中でも事業成功の鍵として、顧客の接点であるサービスの充実には特に注目したと思われます。とくにポイントやマイルの還元率競争は彼らの大きな関心の的となったことでしょう。
ポイントサービスは、欧米で生まれたものですが、計算が苦手な人も多くて、欧米では日本ほど盛り上がっていません。むしろ伝統的にクーポンの力が強く分かりやすいのでクーポンに関心が集まっています。
しかしアップルはネット空間ではポイントとの相性が良いと考えて丁寧に研究した(日本人の熱狂ぶりにも注目した)と思われます。