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不安定な動きが続く原油。地学リスクの悪化により、金は節目の1,300ドルを試すか?=江守哲

トルコはイラン産原油の全面禁輸を否定しつつも米国に逆らえず

アラブ首長国連邦(UAE)のマズルーイ・エネルギー相は、「世界の原油在庫は米国を中心に増え続けており、OPECと非OPEC産油国により、原油市場の均衡化を図る課題はまだ完了していない」との見方を示しています。

イラクのアブドルマハディ首相は、隣国イランと米国の緊張激化を受けて、両国にそれぞれ代表団を派遣する方針を明らかにしました。

米とイランに緊張緩和を訴えるとみられていますが、双方の不信感は根深く、奏功するかは不透明な情勢です。

米国は、イランによるイラク駐留米軍などへの脅威が高まっているとして警戒を強めています。

ただし、アブドルマハディ首相は「米国もイランも、戦争は望んでいないとわれわれに伝えてきた」と強調しています。

トルコは米国によるイラン産原油の全面禁輸を批判しているが、実際にはイラン産原油の輸入を停止し、米国の対イラン制裁措置を完全に順守しています。

米国は5月1日に、イラン産原油の禁輸措置でトルコなど8カ国・地域を適用対象外とする措置を打ち切りました。トルコは米国の対イラン制裁措置を批判しています。

もっとも、5月に入ってからトルコで荷下ろししたイランのタンカーは皆無とされています。

適用除外措置打ち切りの4日後にイラン産原油13万トンを積んだタンカー1隻がトルコに向けて地中海を航行していたもようですが、その後進路を変更し、シリアの港で荷下ろししたといいます。

トルコはロシア製ミサイル防衛システムの購入計画などについて、米国との関係が悪化しているといいますが、逆らうことはできないことを良く理解しています。

サウジアラビアは収入減も、原油の生産・輸出拡大を急がない見方

一方、サウジアラビアは、原油の生産・輸出拡大を急いでいないとの見方があります。市場に追加供給すれば、在庫が再び増加して価格を押し下げるリスクがあると懸念しているためです。

サウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は、「われわれが優先するのは、在庫が緩やかに減少しながらも確実に平均水準に向かい続けるような生産管理を維持することだ」としています。

外交上必要な米国との良好な関係を損なわないことと、財政下支えのために原油輸出収入を適切な水準に保つことをうまく釣り合わせようとしています。

イランと敵対しながら国内経済改革を推進しているサウジにとって、米国とのつながりは一段と重要さが増してきているといえます。

サウジ上層部は既に米国との間で、原油市場への安定供給を保証する見返りに政治的・軍事的な保護を受けるほか、米政府がイラン制裁を強化するという取り決めに合意しています。

しかし、サウジは原油価格が上昇しない限り、増産や輸出拡大に動く動機は見当たりません。その結果、石油市場が供給不足になる可能性もあります。

データイニシアチブ(JODI)に提出された公式統計では、サウジの第1四半期の原油輸出は前年同期比で1%弱減少し、11年初め以降の平均を2.5%下回っています。

ただし、輸出収入は前年同期比7%減です。主に1月と2月のブレント原油の平均価格が非常に低調だったことが理由に上げられます。

3月までに収入は1日当たりおよそ4億8,000万ドルと前年並みになったものの、直近のピークだった昨年10月の6億ドルには届いておらず、14年の原油価格の急落前の水準に比べると半分より少し多い程度です。

収入を最大化するという観点では、輸出拡大が正当化されるのは市場の需要超過が明白で、輸出を増やしても価格への悪影響が限られる場合だけです。

しかし、当面はサウジの政策担当者や原油販売業者は、今年後半に供給が不足するとの確信は持てないでしょう。

Next: 原油需給は今後どのようになっていくのか?

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