米国の石油在庫増と、さまざまな需給引き締まり要因
原油は下落しています。
米国の石油在庫増と景気への警戒感で、週間ベースでは今年最大の下落率を記録しました。
ブレント原油は週間ベースで4.5%安、WTI原油は6.4%安と、下落率が昨年12月以来の大きさでした。WTI原油は在庫増が圧迫要因となりました。
米エネルギー情報局(EIA)が発表した前週の原油在庫は470万バレル増となり、17年7月以来の高水準となりました。製油所稼働率がこの時期としては低く、これが在庫増につながっています。
米国では在庫水準が17年7月以来の高さにあり、WTI原油の受け渡し地点であるオクラホマ州クッシングの原油在庫も17年12月以来の高水準となっています。
また、米中貿易摩擦やその影響による景気の先行きに対する警戒感が上値を抑えています。
24日までの週の石油掘削リグ稼働数は、前週比5基減の797基でした。減少は3週連続で、18年3月以来の低水準となりました。前年同週は859基でした。
米エネルギー情報局(EIA)によると、今年10-12月期の米国内の産油量は依然として日量1,300万バレルに達する見込みです。
先週の原油相場は、米国とイランの間の緊張の高まりが供給混乱につながるとの見方がある一方で、米中貿易戦争で原油需要が抑えられるとの懸念も上値を抑えました。
OPECとロシアなど非加盟産油国の協調減産により、需給は既に引き締まっています。ナイジェリアの主要パイプライン閉鎖やロシアの供給混乱も加わり、需給がさらに引き締まっているもようです。
一方で、米中両国が互いに関税をかけ合う貿易摩擦の激化を受けて、世界経済の減速懸念が高まっており、これが石油需要の伸びの鈍化につながるとの見方が売りにつながっています。
中東の緊張感高まりが障害、原油在庫を減らして市場に対応
イラクのガドバン石油相は、「中東での緊張感の高まりは世界の原油市場の安定にとって障害になる」とし、OPEC総会で協議される新たな合意への道筋を開くために、共同閣僚監視委員会(JMMC)は市場を監視する必要があるとしています。
サウジのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は、「原油在庫を徐々に減らすことで意見が一致している」とする一方、「脆弱な市場のニーズに対応していく」としています。
ファリハ氏の発言が材料視される形で上昇する場面もありましたが、最終的に値を消す展開となっています。
一方、中東情勢の緊迫化は下値を支えています。
トランプ大統領は、「イランとの衝突が発生すれば、イランは正式に終わる」などとツイッターに投稿しました。
またサウジは、「イランへの対応に全力を尽くす用意がある」としたうえで、「戦闘回避はイラン次第」との見方を表明しています。
中東のテレビ局アルアラビーヤによると、サウジアラビア軍は、イエメンの反政府武装組織フーシ派がサウジ西部へ発射したとみられる弾道ミサイル2発を迎撃し、破壊したもようです。ミサイルはサウジ西部の商業都市ジッダとイスラム教聖地メッカへ向かっていたといいます。
イランが後ろ盾のフーシ派は14日に、サウジの東西を結ぶ送油管施設を無人機で攻撃しました。サウジは報復のため、フーシ派が支配するイエメン首都サヌアの武器庫などを16日に空爆していました。
米国とイランの対立激化の余波で中東の関係国間でも緊張が高まる中、サウジとフーシ派の空爆の応酬が激しくなる恐れが強まっています。
中東では米国が空母や戦略爆撃機を派遣したことで、イランとの緊張が高まっています。
また、イランが支援するイエメン反政府武装組織フーシ派とサウジアラビアとの間では既に戦闘が激化するなど、地政学的リスクが一段と高まっており、中東産原油の供給が混乱するとの懸念が原油相場を支えていました。
しかし、この緊張緩和が緩むとの見方が、先週の原油相場の急落につながりました。
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