円ドルについて、「緩やかに100円に迫る」
標題は榊原英資元財務官の言い分である(日経ヴェリタス紙6月23日号)。金融政策の正常化議論がしぼみ、先行き不透明感から緩和狂騒の気配が濃くなっている。そこで榊原英資氏は「円相場は来年はじめにかけて緩やかに1ドル=100円に迫る」と語っている(前掲紙6月23日号)。
中長期の見方;日本の企業は円高をそれほど恐れていない
標記の件は、内閣府が毎年実施している「企業行動に関するアンケート調査」による。
それによれば、企業のドル円レートの採算点は18年度は99.8円だった。26日に5ヶ月ぶりの106円台を見たが、輸出企業は多少円高になっても採算がとれる体制をとっている。
アベノミクスの経済政策は企業の長期的成長マインドにほとんど影響を与えていない(企業が考える中期的な中長期の経済成長見通しは、アベノミス始動の年の12年度に1.1%だったものがその後13年・14年には1.4%に高まったが、18年度には1.1%に減り、まさしく「行ってこい」になってしまった。
アベノミクス政策は短期的に経済を刺激することには成功したが、中長期的な成長力の活性化にはつながらなかった、ということになる。
そもそも論で言えば「生産の伸び率=(雇用の増加率)+(労働生産性上昇率)」である。この企業の生産性向上への取り組みは不十分だったと言わねばならない。
雇用増は大いに結構なことであるが、生産の伸び率につながっていない。つまり、「第三の矢」は、当メルマガでアベノミクス始動期から述べているように民間企業がやることであるから政策的に持って行くのは難しいのだ。
中長期の見方;トランプの行動
米下院は民主党が多数だから、トランプに対する調査委員会の委員長は民主党が占めることになろう。トランプのロシアゲート疑惑はもとより選挙資金不正利用疑惑・脱税疑惑まで徹底的な調査を進め得ることになる。そこでトランプは何とかして米国民の目をそらせようとする。
それはもとより議会を通さずに遂行できる外交と通商である。これを通して大統領はアピールしようと図るだろう。また、大統領は非常事態宣言を出せば議会を通さずに、平時では制限されている権力を自由に行使できる。したがって、国家資金も議会を通さずに支出できる。今年の2月にトランプはメキシコとの国境の壁の建設資金を出させるために国家非常事態宣言を出した。
彼はほとんど全てを「思い付き」でやっているように見えるが実はそうではなく、来年の再選に向けて全てを計算し尽くした行動であろうと筆者は思う。したがって来年の秋に向けて、トランプはますます飛びぬけたことを突然に言い出すことになろう。
トランプ大統領の弾劾を巡って民主党が二つに割れている。下院で過半数を握る民主党が弾劾決議案を可決したとしても、上院の弾劾裁判で有罪判決が出なければ大統領は罷免されない。上院を支配する共和党が自らのリーダーに対して有罪判決を下す道筋は考えられない。
民主党の中でもトランプ弾劾に反対する一派もある。例えば、下院議長もそれに与する者である。今弾劾に踏み切ったら、かえってトランプ支持者の結束力をたかめるだけで逆効果だという読みだ。
弾劾の効果を最大に高めるためには大統領選挙の寸前まで待った方がいいという考えだ。弾劾を急ぐ民主党議員はトランプ支持者の団結を高める刺激剤となるだけであり、トランプの思う壺になるという考えだ。トランプ自身も弾劾されれば支持者の凝集力を高め支持率が上がると信じていると勘繰る向きもある。
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第1部;7月は高く始まろうがその持続性には問題ある。用心深くあれと呼び掛けたい
第2部;当面の市況
第3部;中長期の見方
第4部;念のため、筆者の基本的スタンスを要約しておきたいと思う
第5部;「2000万円問題」の金融庁の真意
第6部;読者との交信蘭
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※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』』2019年6月30日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
『山崎和邦 週報『投機の流儀』』(2019年6月30日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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大学院教授(金融論、日本経済特殊講義)は世を忍ぶ仮の姿。その実態は投資歴54年の現役投資家。前半は野村證券で投資家の資金運用。後半は、自己資金で金融資産を構築。さらに、現在は現役投資家、かつ「研究者」として大学院で講義。2007年7月24日「日本株は大天井」、2009年3月14日「買い方にとっては絶好のバーゲンセールになる」と予言。日経平均株価を18000円でピークと予想し、7000円で買い戻せと、見通すことができた秘密は? その答えは、このメルマガ「投機の流儀」を読めば分かります。