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G20終了で市場は「米中雪解け」の評価。中長期の視点では米市場のバブル相場に警戒=山崎和邦

G20は波乱要因を含みながら前回のような決裂状態は避け得た

米中会談は平和裡に終わった。米が追加関税を見送った。共同声明も出せた。一応の成功と見られる。議長国の安倍首相のカオも立った。

さらに米はファーウェイに米製品を売らないと言っていたことを撤回した。「米中雪解け」が市場で前向き材料として評価されるだろう。

まず、安倍首相はG20会議に先立ってトランプと短時間だが会談し、日米同盟の確認と貿易問題の早期解決とを約し、為替問題も避け得た。「議長国の首相としての僕の立場を配慮してくれ」という意味の事前の調整だったのであろう。

一応の共同声明は成立しての解散だったから、議長国の安倍首相の役割は果たせたということになろう。選挙に役立つことはもちろん計算済みだ。何しろ「外交の安倍」だから。

米朝会談の決裂のようなことになることを恐れたのは、むしろ中国の方だったろう。習近平は人民の手前、メンツを立てることに腐心してきたが、本心は米中摩擦で経済が壊れることを最も気にしているはずである。習近平は、トランプが演説する場面を欠席する予定だったらしいが安倍首相が出席を求めたので出席したという経緯があった。安倍首相は議長国として頑張ったのであろう。

一方、トランプも来年の再選に向けて経済が壊れてNY株が下がることを何よりも恐れているはずだ。しかし支持層に対するポーズもある。

前回のG20は共同声明が合議に至らず、端的に言えば失敗に終わった。アメリカが「保護貿易と闘う」という文言を削除するようにこだわったからだ。

今回もトランプは事前に同盟国にさえも矛先を向けてから日本に来た

「今までアメリカを利用尽くした国々(貿易相手として最大手の中国・日本を指す)とG20で会うのが楽しみだ」「彼らはアメリカ合衆国を利用し尽くしてきた」と「憎まれ口」を敢えて飛ばしながら大阪に向った。

開幕前に大阪市内で開いたBRICSの振興5か国は、米国を保護主義と決めつけ、カドの立つ用語で世界経済の公正な新モデルを作ろうと呼び掛けたが、安倍首相がカドの立つ言葉を避けて抽象的な言辞で共同宣言をまとめようと努めた

議長国の議長たる者の責務であるが、さすがに「霞が関文学」で磨かれてきた官僚の作った文言であろう。

一方、米中の対立の隙を突いてロシアとインドは台頭しようとしている。

また一方で、欧州勢は精彩を欠いた。無理もない。彼らの国内はナショナリズムとポピュリズムが幅を利かせつつあるから。

各国が国益をかけて闘いながら表面的には仲良く開催して(抽象的文言ながら)国際協調を誓い合って笑顔で解散した、こういうG20であった。

200年前、ナポレオン戦争の後のウイーン会議は「会議は踊る」と揶揄されたが結果的には難渋しながらも問題は決着させた、これと似たG20会議だったろう。ただし、ウイーン会議で名を馳せたメッテルニヒ・タレーラン(※注)のように200年後まで安倍首相が語り伝えられることはないであろう。

注:ナポレオン戦争の終結処理のために、ロシア、イギリス、プロイセン、オーストリアの四大国からなる委員会の議長にメッテルニヒが選出された。彼が最初に行ったことは、タレーラン仏代表を参加させることの同意を委員からとることだった。

これを今回のG20会議で習近平がトランプの演説場面を欠席する意図を止めさせるべく安倍首相が説得して出席させたこと比較し、安倍ファンが200年前のメッテルニヒと比べたがるかもしれない。一方、仏代表のタレーランは外交の名人として名高い人だった。

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