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G20終了で市場は「米中雪解け」の評価。中長期の視点では米市場のバブル相場に警戒=山崎和邦

「大暴落」の前には必ず「熱狂的な陶酔(ユーフォーリア)」がある

この命題はかなり高い確率をもって真であるとする。そうすると、この「命題の対偶」は「熱狂的な陶酔がなければ大暴落はない」ということが真であることになる。「AはBである」の命題が真であるとすれば、「BはAである」は真である時もそうでない時もある。これは論理学上「『命題の逆』は必ずしも真ならず」と言う。

または「AでないならばBではない」は必ずしも真ではない(「『命題の裏』は必ずしも真ならず」、である)。

ところが、「BならざるものはAではない」。これは常に真である(「命題の『対偶』は真である」ということになる)。

くどいようであるが、多くのエコノミストやストラテジストと称する人たちは、この論理の基礎的な組み立て方の法則を無視して語るケースが多い。

念を押すが、陶酔的熱病と言えるほどの活況相場がなければ大暴落と言えるほどの下降相場は起きない。

言い回しの問題はともかくとして、日本市場に熱狂的相場がなくもNYにそれが起こって暴落すれば日本株も一人前に暴落する。これが現実であろう。

現実に株価が大幅下落する要因は大別して3つある。米中貿易戦争の長期化、消費増税の強行、FRBの動向、この3つであるとしよう。

中長期の見通し:均衡為替レート

日本経済新聞社と日本経済研究センターは、外国為替相場は長期的に見たら経済のファンダメンタルズで決まるという考え方から独自の均衡為替レートを算出した。

御承知の通り為替相場は、財・サービスの輸出入という実需とともにその何倍、場合によっては何百倍もの投資行動によって左右され、または覇権国の意向によって大いに左右されてしまうという面があるが(プラザ合意の例等)、長期的にはファンダメンタルズによって決まるという考え方である。

その考えに基づいて前掲2者は「日経均衡為替レート」を算出した。それによると円相場の理論値は2019年3月時点で「107円台前半」となった。国内の経済実態を写す種々のマクロ経済の指標から見て妥当な水準を言う。

これは為替相場の予想には向かないと筆者は見るが、割高か割安かを見る客観的な尺度にはなると思う。19年1月~3月時点では107.2円が理論値だった。同期間の相場実態は平均110円だった。均衡為替レートの算出の仕方には様々あり、英エコノミスト誌が長年やってきた「ビッグマック指数」(マクドナルド・ハンバーガーの)が有名だが、筆者はこんなものは昔から信じていなかった。いくら世界中で販売されているものとは言え、購買力平価を数百円の物で計測はかるべきではない。

筆者は理論値よりも「相場は相場に訊け」にしたがって企業卸売物価指数の40ヶ月移動平均の40%上下乖離をもって上限下限と見てきた。この見方は概ねこの30年間は大きくは外れなかったが、プラザ合意のように覇権国家の意向によってどうにでもなることは事実だ。

一方IMFは、経常収支という外貨を稼ぐ力を指標として計測してきた。これの方が英エコノミスト誌のやり方よりも妥当性がある。

ともかく、日経新聞社と日本経済研究センターの均衡為替レートの算出によれば理論値は107年、米利下げなら105円、これが妥当だと言う。

ところで、18年度の日本企業の想定為替は99円台だった。したがって多少の円高に振れても輸出企業が直ちに減益になることはなさそうだ。

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