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株安2大要因を覆す「理外の理」 マイナス金利と原油安、私はこう見る=山崎和邦

今の株式市場の圧迫原因、諸悪の根源は原油安である

マイナス金利の影響も大きいが、「諸悪の根源は原油安である」という本稿従前の言い分は撤回しない。世界景気の変調により需要が減っているにもかかわらず生産は減らさないというのだから価格は下がる一方である。

生産を調整しようにも、OPECが価格調整機能を喪失している現在、原油価格が戻ることは理屈の上ではあり得ない。商品ヘッジファンドの空売り玉が膨大に積み上がっていて、その買い戻しによる「踏み上げ相場」があったとしても、市場内部要因による上昇は一時的なものにすぎない。

サウジアラビアやロシアなど4カ国が増産凍結を合意したが、原油市場の上昇要因にはならなかった。4カ国の会合前には期待が先行して一時35ドル台まで戻し、WTIも31ドル台半ばまで上昇したが、会合の結果が伝わると売りが優勢となって下降に転じた。

今回の合意は、4カ国協議に参加していないOPEC加盟国にも同調を求めており、実効性には懐疑的である。

産油国の運用資金は欧州を通して流入するので実態は不詳であるが、概ね200兆円と言われていて、その内の60兆円が日本市場に入っていると言われている。

その産油国の財政が赤字になるので日本株をさかんに売っている。トヨタ株がその象徴である。アラビア半島の諸国に旅行すれば、どの国に行ってもタクシーは100%近くがトヨタである。当然彼らはトヨタ株を大量に持っているはずだ。それが大量に売られている。この現象は、トヨタ株に象徴されているのであって、今の株式市場の圧迫原因は原油安である。

諸悪の根源は原油であると前述した。これは次のような経緯を辿って現象する。福島原発の後から原発発電が停止されて火力発電重点に移行したために、我が国の貿易収支が急速に赤字化した。これは本来、円安の原因となる(円ドル相場70円台の頃、本稿で「3年以内に円は120円、10年以内に200円」と述べた。前段は良いとして後段は未だ撤回していない。いちいち撤回していたら大手証券の株価予測のように“予言”にはならない)。

実際、12年11月から安倍政権下の金融政策の発表によって1円の介入もなしに円ドル相場は120円台になった。これは火力発電重点のために原油を大量に輸入した結果としての貿易収支の赤字化が結果するところであった。

ところが、原油価格が14年半ばから暴落し、かねて本稿が重視してきたところの12カ月移動平均の40%乖離にまで下がった。そのためもあり、円安のためもあり、貿易収支は急速に黒字化した。貿易収支の急速な黒字化は円高への力学として作動し、また、原油安は日銀の「2%目標」に対する大きな支障となった。

Next: 本来国益になるはずの原油安が株安を招くメカニズム

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