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株安2大要因を覆す「理外の理」 マイナス金利と原油安、私はこう見る=山崎和邦

マイナス金利に慌てる証券会社・銀行の動きが株安を招く

マイナス金利の導入は、本稿が述べる「麻薬」の最たるもので、それは麻薬だけに株式市場への効き目は2日しかなく、その後の株価水準は当該政策の導入以下のレベルに下がってしまった。

マイナス金利は、証券会社、銀行業等の金融業に対して最初に副作用を及ぼした。証券会社は、転換社債の適正価格が計算出来ない。それは、例のノーベル経済学賞受賞者ショールズ・マートンの計算方式を使っているからである。ノーベル経済学賞受賞者といえども、マイナス金利のことは想定していなかったからだ。

もっとも、彼らはノーベル経済学賞受賞の後、自ら取締役に就任していたファンドが破綻して、「奉加帳方式」によって処理されたという経緯もあり、それはロシアの金融危機を想定していなかったことに起因するという。その後、再びファンドを破綻させたということはあまり知られていない事実である。このようにマの抜けた学者の計算式を使っていたからだと言われればそれまでであるが――。

投資信託協会会長が日銀に日参して、マイナス金利の遂行は証券会社には避けてもらいたいと請願に行ったそうだが無理もない、MRFの金利も計算できないことになる。MRFは株式・投資信託を買うための資金をプールさせておく、いわば当座預金口座であるから、これが使えなくなれば証券市場を縮小させ、それは株価下落を招く原因になる。

斯くてマイナス金利政策は、その副作用を最初に株式市場に及ぼす。現今の乱高下は、これを嗅ぎ取った予兆である。現に日興証券はMRFの運用を取り止めるという。他の証券もそうなるであろうことは想像に難くない。

次に銀行もマイナス金利のもとでは普通預金と定期預金の区別も付け難く、運用難になる。

マイナス金利でトクをする者はリース会社のように資金の仕入れを必要とする業種、借入金で設備投資する積極的な企業、これらであり、本来、後者の増加を狙ったものだが、企業は90年代の「貸し渋り」と「貸し剥がし」にすっかり懲りてアツモノに懲りてマナスを吹く状態になり、資金を自分の懐にため込んでいる。これも「貸し渋り」と「貸し剥がし」の元祖たる三重野元総裁の罪の深さが世紀を跨いで効いているのだ、と言いたい。

もとより実体経済は鉱工業・運輸・流通・サービス・農業等の全体であり、金融政策はそれがうまく行くための「手段」である。しかし、金融政策が実体経済に効き目が無いとなれば、それを「予見する鏡」である株価は下がることになる。つまり、「鏡」が「手段」に振り回されることになる。

2月21日の日経新聞によれば、2015年の不動産融資は平成バブル時以降26年ぶりに最高だったという。低金利を背景にオフィスビルや住宅などに資金需要があり、異次元緩和で資金が不動産市場に流れ込んだというが、地価の急騰や取引量の急拡大というような過熱感はまだない。

Next: 黒田総裁の“裏切り”により大きく毀損した「日銀と市場との対話」

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