現時点で減配の兆候は見られない―株主はチェックを怠るな
のれんの減損の可能性が全くないと言うつもりはありません。将来のことは予測できないのが、事業の世界です。
しかし、万が一2兆円ののれん全額が減損してしまっても、危機的な状況にはならないでしょう。
JTの資本は2.7兆円あります。2兆円の損失が発生しても債務超過にはならず、なお資本には余裕があるのです。
のれんの減損は、キャッシュ・アウトがありません。したがって、配当に対しての直接的な影響はないのです。配当原資(利益剰余金)にも余裕があり、JTは4,000億円の営業キャッシュ・フローから淡々と配当を払い続けることができるのです。
もっとも、のれんを減損しなければならなくなるのは、業績が悪化した時です。業績が悪化すれば、上記の様々な前提条件が崩れることになります。
したがって、株主はた業績のチェックを怠らず、業績悪化の兆候に目を光らせなければならないのです。
現時点で私が言えることは、減損や業績悪化の兆候は見られないということです。キャッシュ・フローが安定していれば減配の可能性は低いですし、株式の37.6%を保有する財務省も減配はよしとしないでしょう。
配当目的の投資としては決して悪くないと考えます。
投資に100%の正解はありません。その中で、現時点で得られる情報から少しでも有利と考えられる行動を取ることが投資家に求められる技量です。ぜひ企業のことをもっと知って、その技量を高めてください。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。
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『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2019年9月5日号)より
※太字はMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。