リクルートHDは、28日に同社の株主13社が政策的に保有しているリクルート株を最大1億2,150万株売り出すと発表しました。この時の会計処理を解説します。(『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』柴山政行)
4,025億円相当のリクルート株を13社が一斉に売却…!
対策として、800億円相当の自社株買いも発表
2019年8月29日の日経朝刊17面によりますと、リクルートホールディングス(HD)は、
28日に同社の株主13社が制作的に保有しているリクルート株を最大1億2,150万株売り出すと発表しました。
※参考:リクルート株、13社が売り出し 持ち合い解消へ‐日本経済新聞(2019年8月28日公開)
今回の売り出しの背景について、リクルートHDでは次のように発表されています。
…今般、当社は、複数の当社株主が長期的に保有している当社普通株式を売却したい旨の意向を確認しました。また、従来より当社は、資本市場において、当社株主による当社株式の潜在的な市場売却の可能性が当社株式の適切な価格形成に与える影響について懸念されていることを認識しています。
本売出しは、2016年に実施した株式売出しと同様に、当社株式の円滑な売却の機会を設定することで、当社株式の売却意向を有する当社株主13社による市場売却の可能性にかかる懸念に対処することを企図するものです。
本売出しを通じて、より多くの皆様に、当社の長期的な戦略をご支援頂けることを期待しています。…
発行済株式総数の約7.16%に当たるリクルート株が13社により売却されることになります。金額にして、4,025億円相当(28日終値ベース)です。
事業会社の持ち合い株の売却規模としては過去最大級だそうです。
よって、これが市場におけるリクルート株の需給バランスに与える影響は大きいはずです。
そういったこともあり、リクルートHDは間出て800億円相当の自社株買いを発表しました。
いっきに株式が売りに出されると、売り圧力が大きく買いの勢いを上回ることから、リクルートの株価が下落する心配が出てきますね。
そこで、リクルート側としても、自社株を市場から買い戻すことで、価格をした支えする必要性が生じてくるというわけです。
リクルートHD株の売却を表明したのは、同紙面によりますと凸版印刷や大日本印刷、三井物産などの事業会社のほか、大規模な削減方針を表明済みのメガバンクなどの金融機関ということです。
従来より、株式の取引関係維持などを目的とした相互持ち合いは、日本の資本市場における大きな課題として問題にされてきました。
お互いに株を持ち合うことで、健全な株主による経営のチェックが働かず、企業の統治に関する問題、すなわちコーポレートガバナンスにも悪い影響を与えるだけでなく、資本効率も悪化するとの懸念があったためです。
こういった流れは、近年徐々に解消へと向かっていますが、いまなお上場企業には持ち合い株が27兆円近くあり、日本株全体の約5%を占めているそうです。
また、今回の売り出しで減ったとは言え、まだリクルートHDの発行済株式総数の24%が政策的な持ち合い株のようです。
なお、持ち合い株の会計処理についてポイントを上げてみますと、次のようになります。
1.持ち合い株は、固定資産の「投資有価証券」として表示される。
2.期末は時価で評価されるが、翌期首には原価に戻される(洗替法)。
3.評価差額は損益とはならず、バランスシートの純資産に計上される。
4.持ち合い株が売却されたら、売却差額は特別損益となる。
(仕訳例)持ち合い株10,000千円を15,000千円で売却し、現金を得た。
--(借方)--
現金預金15,000千円
**--(貸方)--
**投資有価証券10,000千円
**投資有価証券売却益5,000千円
以上、リクルートHD株の保有者13社による売却のニュースと、持ち合い株売却に係る会計処理のお話でした。
image by : alphaspirit / Shutterstock.com
『時事問題で楽しくマスター!使える会計知識』(2019年8月30日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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