金融政策のみではデフレ脱却できない
さらに言えば、政府が消費税増税や財政支出の削減といった緊縮財政という「需要縮小策」を推進したとしても、インフレ目標と量的緩和により「十分に」消費や投資が拡大するか、になります。
日本銀行が(ロジックとしては)需要を拡大し、デフレギャップを埋める政策を推進する反対側で、政府が緊縮財政により需要を縮小させようとしているわけです。
これで「デフレ脱却」できると思う方がおかしいのです。
というわけで、わたくしが岩田教授の立場にいたとしたら、13年10月1日に安倍政権が14年4月の消費増税を決定した瞬間に、
「政府が緊縮財政という需要削減に走っている以上、金融政策のみではデフレ脱却できない」
と宣言し、辞表を叩きつけたでしょう。
岩田氏をはじめとするリフレ派の責任
ところが、不思議なことに岩田教授は消費税増税に表立って異を唱えたことはありませんでした。
それほどまでに、金融政策の効果を過大評価していたのか。あるいは、政権に絡めとられ、自らの学説に殉ずるよりも「権力」を選んだのか。
分かりません。分かりませんが、いずれにせよ一つ、明らかになったのは、岩田教授をはじめとする「いわゆるリフレ派理論」が、財務省が望む緊縮財政の背中を押してしまったという政治力学なのだと思います。
『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016/2/29号より
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