再三の「騙し討ち」で市場の信頼を失った黒田日銀に打つ手なし
散々追加緩和に消極的な発言を繰り返していた黒田氏が昨年12月にまたもや市場を騙まし討ちにしたと思いきや、先々週の1月会合でも再度騙し討ちです。
先月末の日銀政策決定会合で日銀では初めてとなるマイナス金利を導入することにしました。しかも、その後も黒田氏は様々な機会を利用して必要なら更なる緩和もあると言い続けていますが、全く効果がありません。日銀のマイナス金利導入をあざ笑うかのように、直後から急激な円高になってしまいました。
直後から「必要なら更なる緩和も躊躇なく」と発言していますが、今までの行動から完全に信頼されなくなってしまいました。決まった日程でしか会合が開けない以上、日ごろの発言の信頼性も重要なのに、黒田氏は完全に信頼されなくなってしまったのです。
しかも、先週末の上海G20で日本が通貨安政策の国としてやり玉に挙がりました。
ユーログループ議長は、ECBの追加緩和のアピールをした反面で、日銀にはくぎを刺したのです。
どう考えても、ECBの追加緩和と日銀の追加緩和では内容の差はなく、日銀だけが通貨安の犯人で責められる必要はないのですが、中国以上にやり玉に挙がってしまったのです。
過去G20では、黒田氏の異次元緩和は称賛されることはあっても批判されたことはありませんでしたので、黒田氏にとってさぞショックだったでしょう。せっかくのサプライズだったマイナス金利も理解されただけであり、好意的な評価はありませんでした。
これはうがった見方をすれば、欧州が経済競争力を高めるために、日本に外交戦争を挑み、日本が負けたと見ることもできます。しかし、先日の記事で紹介したように先週米国では通貨介入をする国に対し制裁を加える法案が成立したので、米国からすれば日本も欧州も同じかもしれません。
日銀は打つ手が出尽くしと取られ、発言の信頼性がなくなっただけでなく、追加緩和という手段すら使えなくなった可能性があるのです。
発言もサプライズもなかったら、マーケットがリスクオフに転じたら日銀は救う事ができません。
これは日銀にとってもネガティブですが、日本株にとっては最後の救い手が頼りにならないので非常にネガティブです。
日銀は手をもぎ取られてしまいましたので、こういうときは仕掛けが入り易いです。先週も書きましたが、救世主がいない不安に乗じて、動かし易いアセットを使い、無知な個人投資家でボラティリティが上がっている日本株と為替で仕掛けている可能性が高いのです。
黒田氏に対する発言の信認が崩れた以上、3月の日銀政策決定会合まで何を言ってもマーケットは反応しないでしょう。
発言の重みや信頼性がなくなった以上、当面日銀発のニュースは気にする必要も無くなります。従って、3月の日銀政策決定会合直前まで日銀は気にすることはありません。