無職と非正規で62%を占めている
母子家庭の18.2%、つまり約20%の母親は仕事を持っていない。そして、仕事を持っている母子の43.8%は非正規である。シングルマザーは無職と非正規で62%を占めているということになる。
子供を抱えたシングルマザーは、子供を抱えてフルタイムの仕事はなかなか難しい。子供に時間を取られて仕事に打ち込めない。できる仕事は非正規のパートタイムばかりで、それも子供の都合で休みがちになる。
月10万円の生活
では、この非正規で働いているシングルマザーはいくら稼いでいるのだろうか。厚生労働省の資料『ひとり親家庭等の現状について(平成27年4月20日)』によると、平均年間就労収入は「125万円」であると述べている。
125万円と言えば、月換算で計算すると約10万4,200円ほどである。ざっくり言えば月10万円がシングルマザーの収入であると言える。10万円で母親は自分と子供の生活を成り立たせなければならないのである。
今の日本では、自分ひとりで10万円で暮らすというのも経済的に苦しいが、母子家庭はそこに子供が加わる。その貧困は私たちが想像する以上に悲惨なものになっている。
谷町九丁目のラブホテルの一室で突然死して見捨てられた47歳の女性が、なぜそんな歳になってデリヘルの仕事をしなければならなかったのかは、こうした統計をつぶさに見ていけば浮かび上がってくる。
都会の片隅で死んでしまった彼女だけでなく、多くのシングルマザーは普通にしていれば生きていけない極限状態にある。まして具合が悪いからと言って休んでいたら、なおさら生きていけない。
カサブランカ・グループ
西日本で有名なデリヘルにカサブランカ・グループがある。広島から始まったデリヘル・グループだが、創業者は長谷川華という女性だ。
彼女にインタビューした時、「シングルマザーの女性も面接にくる。若い女性に需要があるのは当然だが、30代以上の女性の方も想定以上に需要があった」と語っていたのは印象に残った。
長谷川華さんは『ママの仕事はデリヘル嬢』という書籍を上梓している。そこには、彼女自身もまた離婚してシングルマザーとなり、次の男ともうまくいかずに別れ、電気もガスも止められた翌日にデリヘル嬢になることを決意したと記されている。
日本では結婚したカップルの3組に1組は離婚に至る。離婚に至る理由は様々なものがあるのだが、現代の日本は昔と違ってひとり親世帯に転がり落ちやすい環境にあると言える。
子供を抱えて離婚すると、子供の多くは母親が面倒を見ることになる。本来であれば、離婚したとしても父親が養育費を送らなければならないのだが、養育費の未払いは珍しくない。取り立てようとすると、住所すら分からなくなる父親もいる。
その前に、もともと稼げていない父親も多い。取り立てようにも現金をもっていないのである。そうなると、女性は働きながら何とか自力で子供を養わなければならない状況になる。
しかし、こういったシングルマザーにフルタイムの仕事は、なかなかできない。子供に時間が取られるからだ。
そうなると働き先は必然的にパートになるのだが、このパートの基本賃金が安いのである。しかも、子供が病気になったりすると欠勤も余儀なくされるので、収入が減る要素の方が増えていく。
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