ロボット化で得する人は?
逆にロボ化・無人化・AI化によって利益を享受できるのは、いったい誰でしょう。
一義的には労働者への賃金を支払う必要がなくなる「会社」ではないでしょうか。
ロボットやコンピュータも導入の際に費用が掛かりますが、いったん導入してしまえばおカネはさほど要りません。
確かに次の更新時には導入費がかかりますが、ロボットを造るのがロボットだとすれば、規模の拡大によって量産効果を得ることができるはずです。
つまり、ロボットの普及によってロボット自体の導入コスト抑制効果が出るということです。
これに対して人件費のほうはどうでしょう。
人間を量産することはできませんので、ロボットやAIと違い量産効果を得ることもできません。
これはどういうことかと言いますと、今後ロボットやAIの導入コストと人件費の差はますます広がり、それがさらにロボ化・AI化を速めていくということです。
深く考えると怖くなってしまいます。
最終的に得するのは投資家
先ほど僕は、ロボ化・無人化・AI化によって利益を享受できるのは、「一義的には」労働者への賃金を支払う必要がなくなる会社だと申しました。
では「一義的に」ではなく「最終的に」、ロボ化の恩恵を受けるのはいったい誰でしょう。
言うまでもなく会社の保有者である「投資家」です。
冒頭で世界の富裕層11%が世界全体の富の80%を持っていると紹介しましたが、おそらく富裕層の大半は株の所有者でもあるはずです。
FRB発表の資料によると、アメリカでは全株式の90%を上位10%の富裕層が持っているようです。もし前述の通り会社の所有者に、今後さらに富が集まるとすればどうでしょう。
世界はますます株を持つ者と持たざる者の差が広がり、さらに貧富の差は拡大することになるでしょう。
格差拡大はいずれ止まる?
私たちも負け組に入らないよう大局観を持たなければなりませんが、同時にまた、格差拡大がもたらす社会の変容に対する備えを怠ってはなりません。
僕にはどう考えても、このまま格差の拡大が延々と続くとは思えません。
もし今でも1人1票を前提とした大衆による民主主義が機能しているとすれば、いずれ揺り戻しが起こってもなんら不思議ではありません。
具体的には、格差是正を目的とした政策の転換です。
仮に今の連立与党体制でそのような政策転換が無くても、格差是正を目指す他党が「富の一極集中の被害者である国民」の支持を得て政権をとる可能性もあります。
具体的に申し上げるなら法人税引き上げと所得税の累進性強化ですが、それだけでは富裕層が既に持っている資産の再配分はできません。
同時に相続税と贈与税の税率引き上げが検討され、さらに累積している政府債務の一掃を目指した富裕層向けの資産課税が加わることになるかもしれません。
荒唐無稽とお感じになるかもしれませんが、決して可能性はゼロでは無いと僕は思います。