ソフトバンクのオプション取引が相場全体を押し上げた?
このソフトバンクの4,000億の買いというのは通常では考えられないほど、巨額のオプションの取引でした。
これが相場全体を押し上げたとも言われていて、その仕組みをこれからご説明いたします。
まずこのサラリーマン風の人が金融機関だと思ってください。
ソフトバンクグループにオプションを販売しました。
金融機関としては先ほど説明したように100ドルで売ったすると、一旦は100ドルは丸々利益になります。
そして株価が上がらなかったら確実にノーリスクで儲けるということになりますが、一方では先ほどように株価が上がってしまうとそれを売った金融機関は、ソフトバンクと反対の損益ということになるので、損失が今度は青天井になってしまうということになります。
しかし金融機関は潰れるわけにはいかないので、損失を抑えるためにもし株価が上がった場合に損を抑えられるようにしようと思うと、現物株を持っていれば株価が上がった分その現物株が上がって相殺されるので、先ほど売ったような現物株を買うということになります。
ちなみにオプションというのはレバレッジ取引なので、先ほど4,000億をヘッジしようと思ったらそれを10倍ぐらいの株を買わないといけないということになります。
先ほどのオプションの反対側にある株式というのを、市場でどんどん買っていかなければならないということになります。
その結果、Amazonやテスラ、ネットフリックス、グーグルといった、ハイテク株を金融機関が買わなければならないという状況になって、この8月にコロナ禍において、株式事情が不安視される中でどんどん押し上げる要因の1つになったのではないかと言われています。
「インターネット革命」の目標はどうした?
ここまではニュースなどでも取り上げられている話ですが、ここから先は私の独自の分析です。
ソフトバンクグループといえば、パソコンソフトの販売、あるいはパソコン情報誌などの販売ということで成り立った会社ですが、やがてアメリカのYahooを借りて、日本でYahooを立ち上げようという出資から始まっていて、さらにYahoo! BB、つまり日本に高速インターネット普及させようということを頑張ってきて、同時にインターネット革命を起こそうと非常に頑張ってきた会社でもあります。
ボーダフォンを買収して携帯電話に乗り出してインターネット革命を推し進めてきた、日本におけるITの貢献者であることは間違いありません。
しかしある時、大きく風向きが変わりました。
それがアリババへの投資です。
孫社長は、当時のアリババの社長にこういった事業を立ち上げたいという話をされて、ポケットマネーから多額の投資をしました。結果的には、そこで出資した物が何百倍にも化けて多額の利益を上げることになりました。
そこから、孫社長のマインドが変わってきたと思います。
インターネット革命をせっせとやるよりも、こうやって投資をした方が一気に儲けられると考えたのではないかと思います。
やがては10兆円ファンド、いわゆるソフトバンクビジョンファンドを立ち上げていくのですが、それが必ずしもを上手くいったというわけではなくて、最近ではWeWorkや、OYOなどそういったものに投資して、実は中身のあまりないような会社だったりして、損失を被っていたりします。
この新型コロナショックでもそれが顕著に出て、一時期大きく評価を下げました。
しかしそれにも懲りずに直近ではこの投資運用子会社を設立することまで行っています。
これは余剰資金の運用とアセットの多様化ということ、およそ資本金600億円というところでやっていますが、投資対象を見てください。
主に流動性の高い上場株式等ということになっています。
ソフトバンク孫社長の元々の目的はインターネット革命を起こすことだったと思います。
実際にそれを成し遂げてきましたが、それが例えばビジョンファンドでベンチャー企業に投資するということであれば、なかなかお金の周りにくいところに、資金面で手助けをしてインターネット革命を加速させるという言いわけはできましたが、一方で上場株に投資するとなると話が変わってきます。
まずその上場株への投資ということは市場で買うということなので、企業そのものに直接お金が周るというわけでもありませんし、上場しているような企業だったら何もしなくても自分で羽ばたける会社だったりします。
そこにわざわざ会社を立ち上げて投資するというのは、今の本来のソフトバンクのあるべきインターネット革命というところからはかけ離れてしまっているのではないかと感じます。
ましてこのオプションというレバレッジをかけた取引を行っているというのは、本来のソフトバンクの姿からはもはや考えられない状況となっています。