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デジタル人民元を抽選配布。法定デジタル通貨導入で仮想通貨は駆逐される?=高島康司

動き出した「デジタル人民元」

早くも中国は、中国の中央銀行デジタル通貨となる「デジタル人民元」の導入を加速させている。広東省、深セン市は、10月10日までに「デジタル人民元」を市民に配布すると発表した。「中国人民銀行(中央銀行)」と連携した試験運用の一環として、実際にスマートフォンで使ってもらうという。

配布総額は計1,000万元(約1億5,700万円)だ。抽選で1人当たり200元を配るという。専用のアプリをダウンロードして使う形式だ。

「人民銀行」はすでに中国各地で「デジタル人民元」の実用試験を進めているが、今回は実用化を見据えさらに踏み込んだテストだ。「中央銀行デジタル通貨(CDBC)」をめぐっては、中国主導を警戒する日米欧も導入に向けて作業を加速しており、今回の取り組みに注目している。

このように「中央銀行デジタル通貨」の導入は中国を筆頭に加速している。

10月11日、「国際決済銀行(BIS)」は7つの中央銀行と共同して、「中央銀行デジタル通貨(CDBC)」を本格的に導入するための共通の基本原則を公表した。

中国を含め今後の各国による「中央銀行デジタル通貨」の導入は、この基本方針にしたがって実施されるものと思われる。

仮想通貨のゆっくりとした規制

このような「中央銀行デジタル通貨」の本格的な導入に向けての動きが、既存の仮想通貨への規制を強める要因となり、これが一層厳しい規制の導入につながる可能性は大きい。このため、既存の仮想通貨の将来性を悲観する見方も広まっている。

しかし、だからといって、既存の仮想通貨の取引が困難になるほど厳しい規制が課せられるとは思えないという見方が強い。

世界の株式の時価総額は20兆ドルだが、これにははるかに及ばないとしても、既存の仮想通貨の市場規模は2,000億ドルを越えている。

このため、「ビットコイン」や「イーサリアム」などの有力な仮想通貨は、「ゴールドマン・サックス」や「JPモルガン」など、欧米系の大手の金融機関のポートフォリオに入れられて、販売されている。仮想通貨の先物を手掛ける金融機関も多い。

そのため、政府が仮想通貨を一斉に規制し、仮想通貨の取引そのものを禁止するようなことでもあれば、こうした欧米系の金融機関には大きな打撃になる。新たな金融危機の引き金にこそならないものの、主要な金融機関の財務状況の悪化につながることは間違いない。

Next: 目が離せない仮想通貨規制。強引な排除はまだ見られないが

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