ダイニチ工業<5951>は、家庭用石油ファンヒーターを主力とする暖房機器メーカーであり、国内市場においてトップクラスのシェアを有する。新潟県新潟市に本社を構え、製品の開発から生産までをすべて国内自社工場で完結させている点が大きな特徴だ。国内一貫生産による品質管理力と短納期対応力が評価され、量販店や消費者からの信頼を築いてきた。同社は暖房機器に加え、加湿器・空気清浄機といった環境機器、さらにはコーヒー機器などの新規分野にも事業領域を広げており、事業構造の多角化を進めている。
同社のビジネスモデルの根幹は、冬場に需要が集中する石油暖房機器という季節性の高い製品を扱いながらも、年間を通じた見込み生産を行う点にある。需要期直前に一気に生産を行うのではなく、通年で生産を継続することで、需要動向に応じた機種構成の調整や前倒し生産が可能となり、短納期供給という競争優位につながっている。
2026年3月期第3四半期累計の業績は、売上高182.8億円(前年同期比4.3%増)、営業利益25.8億円(同37.8%増)と増収増益となった。主力の暖房機器は、国内自社工場による迅速な供給体制と品質面の評価を背景に、寒気の影響で10~11月の販売が伸長した一方、12月以降の高温推移により伸びは限定的となり、売上高は126.3億円(同0.2%増)にとどまった。環境機器は、燃料電池ユニットの販売減少を加湿器・空気清浄機の販売増が補い、売上高は44.4億円(同12.4%増)と堅調に推移した。環境機器は加湿器を中心に高い伸びを示し、全社の収益性向上に寄与した。その他では、コーヒー豆焙煎機や加湿器用フィルターの販売が増加し、家庭用生ごみ乾燥機を新たに発売したことで、売上高は12.1億円(同24.2%増)と高い成長を示した。売上規模は限定的ながら、新製品の投入が進んでおり、中長期的な成長余地を残している。
市場環境を見ると、国内の石油暖房機器市場は、出荷台数ベースでは2020年度の約187万台から2024年度には約129万台へと縮小しており、横ばいから微減のトレンドが続いている。一方で、販売単価の上昇により金額ベースでは比較的安定した推移となっている。温暖化の影響により、販売ピークが従来の12月から寒さが本格化する2月頃へと後ろ倒しになる傾向がみられるものの、郊外の戸建て住宅を中心とした一定の需要は引き続き存在している。同社はこうした環境変化を踏まえ、石油暖房機器に依存しない事業構造への転換を進めている。
2026年3月期通期の会社計画は、売上高200.0億円(前期比0.5%増)、営業利益14.0億円(同1.4%増)と、緩やかな増収増益を見込んでいる。株主還元については、2026年3月期の年間配当を前期と同額の22円を予定している。
中長期的な視点では、環境機器の拡大に加え、燃料電池ユニットや新規カテゴリが成長ドライバーとして位置付けられている。燃料電池関連については、2028年度に向けて新製品開発を進めている。足元では、生ごみ乾燥機やコーヒー機器といった新製品が投入され、従来の暖房機器では接点のなかった顧客層へのアプローチが始まっている点は、事業ポートフォリオ拡張の観点から評価できる。
総じて同社は、成熟・縮小傾向にある石油暖房機器市場に属しながらも、環境機器を中心とした高付加価値分野へのシフトによって、収益基盤の再構築を進めている。短期的には気候要因や市況変動の影響を受けやすいものの、中長期的には事業構造転換の進展が業績安定化と緩やかな成長につながる可能性がある。
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