米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始して約2週間が経過。欧米からの厳しい経済制裁ですでに疲弊した孤高の帝国は相当なダメージを負ったもようです。しかし、体制を維持し徹底抗戦の構えを崩していません。市場はなお戦況を見守ることになりそうです。
市場関係者の関心は、戦況そのものだけではありません。長年の制裁で圧力を受けてきたイラン経済が、どこまで持ちこたえるのかにも注目が集まっています。トランプ米大統領は今回の作戦について、当初4-5週間程度の軍事行動を想定していました。が、現時点でイラン経済が短期間で崩壊する兆しは見えておらず、予断を許さない状況です。
通貨をめぐる環境も厳しさを増しているようです。2018年に米国がイラン核合意から離脱し、金融取引や石油取引を対象とした制裁を再強化した結果、イランの経済活動は大幅な縮小を迫られました。中央銀行は1ドル=4万2000リヤル前後の公式レートを維持するものの、実勢を反映する闇レートは2025年時点で100万リヤル近くとなり、現在はさらに減価したと推測されます。
それでも、イランは人口約9000万人、国内総生産(GDP)は約4000億ドル規模と中東でも無視できない存在です。欧米の制裁により貿易や金融取引は大きく制限されてきたとはいえ、豊富な資源に支えられ、中国向けを中心に原油輸出は継続。また、国際金融システムを利用できない取引では、暗号資産が資金移動の手段として利用され、制裁下の取引を支える一つの手段となっているようです。
一方、金融市場では軍事衝突の影響が商品価格に表れています。エネルギー供給への懸念が高まり、NY原油先物(WTI)は一時1バレル=110ドル台まで上昇しました。原油価格の上昇は輸送費や製造コストの増加を通じて、世界経済にインフレ圧力をもたらします。為替市場では安全資産としてドルが買われ、金価格も上昇するなど、典型的なリスク回避の動きが広がりました。
この戦争は米国がイランと核協議の最中だったにもかかわらず、イスラエルとともにイランに攻撃を仕掛けたとの認識ですが、国連はイランによる周辺国への報復的な攻撃を国際法違反と結論づけています。米国とイスラエルを公に非難するのはスペインのサンチェス首相ぐらいで、世界の異様な静けさのなかでイランはほぼ孤立。市場は当面、国際社会の秩序崩壊を横目でにらみつつ、イランの持久力を見極めることになりそうです。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
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