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小池流「ユリノミクス」の経済学。結局、誰が得して誰が損するのか?=斎藤満

第1の柱:金融緩和の出口戦略を模索する

その第1の柱は、財政金融政策への過度な依存は避け、日銀の金融政策については円滑な出口策を模索する、と明記していることです。これまで日銀依存で円安・株高の利益に預かっていた市場は目をむいて驚いたと思います。アベノミクスを裏から推していた国際金融資本も「寝耳に水」だったでしょう。

これを前面に出すと、円高・株安要因となります。そのインパクトはバカにできません。安倍政権前の2012年では、四半期での経常利益が12兆円台後半であり(財務省「法人企業統計」)、そこでの株価は日経平均で8500円前後でした。

一方、直近4-6月期の企業の利益は22.4兆円です。ということは、利益水準からみると現在の株価は1万5千円あたりが妥当なのですが、現実には2万円を超え、5000円以上つり上げられた形になっています。これは、アベノミクスのもとで日銀や公的年金が株を買い上げていること、海外投資家がアベノミクス以来、約12兆円も日本株を買い越しているためです。

そのアベノミクスが終焉を見、金融緩和が出口に向かうとなれば、この上乗せ分がはげ落ちます。事前には自民党が勝っても希望の党が勝っても、結局はアベノミクスを維持せざるを得ないのでは、との観測がありましたが、ユリノミクスはこれを否定したことになります。

さすがに小池党首は市場への影響を考えて、6日のロイターのインタビューでは「大きく方向転換する必要はない」と、不安の火消しに回りましたが、基本姿勢はむしろ民間活力の活用にあります。

第2の柱:ベーシック・インカムを前向きに検討

第2の柱は、「ベーシック・インカム」の考えを示したことです。現在、年収170万円前後の非正規労働者が労働者全体の4割を占め、結婚できず、したがって子供も産めない原因の1つになっています。そこで最低所得を保証し、これらの不安を軽減するのがベーシック・インカムです。同時に、年金の先細りで「長生きリスク」に直面する低所得高齢者の不安解消にもつなげる狙いがあります。

本来これは、共産党や立憲民主党が言い出してもおかしくない政策ですが、ユリノミクスがあえて打ち出しました。これは右傾斜の安倍政権に対して、それに反発する左寄りの人々を取り込むことになります。もちろん低所得層にアピールするので、若年層、高齢者の支持も得られると見られます。早速与党は財源問題を取り上げ、「無責任」と批判しますが、国民の目から見れば良い方向にアピールするでしょう。

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