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国家百年の機能不全~安倍晋三にはTPPの責任を取る能力も矜持もない=佐藤健志

「富裕層のみに奉仕する」米国の政治的機能不全を突き詰めれば、国境を越えて新自由主義の徹底をめざすTPP条約にいたるのは必然です。しかし、日本型の政治的機能不全はさらにひどいもの。安倍総理は「国家百年の計」であるTPPの妥結にあたり、日本はアメリカと並ぶリーダーシップを発揮したと胸を張りましたが、その中身は、もっぱらアメリカの意向に奉仕し、自国民の利益を無視するものなのです。

記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2015年12月2日号より
※本記事のタイトル・リード文・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

「日本を尊重するように求めない」リーダシップを発揮した安倍政権

予期されていたTPPの「インチキ」

政治的機能不全」(political dysfunction)という言葉をご存じでしょうか。

これはアメリカの作家、マイケル・グッドウィンさんが提唱した言葉。このグッドウィンさんは2012年、『ECONOMIX』(エコノミックス)という本を、ダン・E・バーさんという人と共同で出版しました。

タイトルの『ECONOMIX』は、ECONOMICS(経済学)とCOMIX(コミックス)の合成語。経済の仕組みについて、辛辣なコメントをまじえつつ、漫画で描き出すという趣向です。グッドウィンさんが文章を、バーさんが絵を、それぞれ担当した次第。

好評だったようで、2014年には「TPPと“自由貿易”」というエピソードが発表されました。こちらは全編、『ECONOMIX』公式サイトで見ることができます。文章は英語ですが、27ページと短いものですし、バーさんの絵が内容を的確に視覚化している。興味のわいた方はぜひご覧ください。
THE TRANSPACIFIC PARTNERSHIP AND “FREE TRADE”

さて。2014年と言えば、TPPが大筋合意にいたる前年ですが、グッドウィンさんはのっけから、物事がこれからどんな展開を見せるかについて、こう予測しました。

  1. 最終的な条約は、普通の人間にはほとんど理解できない内容になる
  2. 政治家、国際金融資本の回し者、および大部分の経済学者は、「TPPは絶対にわれわれを豊かにする!」と力説する
  3. これにより、条約批准に反対する意見はつぶされる
  4. だがTPPがもたらすはずだったメリットは永遠に実現されない

鋭い!個人的には、これにもう1つ、

  1. そしてTPPによって巨大なデメリットが生じたところで、誰も責任を取ろうとはしない

というのを追加したいところですが、それは脇に置きましょう。

米国の政治的機能不全は「富裕層のみに奉仕する」

ならばどうして、TPPが推進されるのか?ここで出てくるのが政治的機能不全です。

「TPPと“自由貿易”」の18~19ページ、「“歴史早わかり”過去40年間、アメリカはどんな経済政策を取ってきたか」という箇所で、グッドウィンさんは政治的機能不全を、条約推進の原因、ないし元凶と位置づけました。

言葉の定義は以下の通り。

この国の政治システムが、富裕層のみに奉仕し、他の国民の利益を無視するようになったことの婉曲な言い方

“歴史早わかり”という見出しの通り、グッドウィンさんはここで、アメリカ政府が1970年代以来、金持ち優遇の新自由主義的な経済政策を推進していった様子を解説しました。富裕層への減税や、大企業にたいする規制緩和、さらには金融市場の規制緩和などです。

これらの政策は、回り回って国民全体に利益をもたらすと宣伝されていましたが、そちらの方はすべて幻だったとのこと。

しかるにアメリカの富裕層は、多国籍企業と密接に結びついていますので、国境を超えた資本の移動をどんどん容易にしたいし、できるだけ多くの国の市場を制覇したい。だから政治的機能不全を突き詰めると、TPPにいたるわけです。国境を越えて、新自由主義の徹底をめざす条約ですからね。

Next: さらにひどい安倍政権。日本型政治的機能不全は「米国の意向に奉仕する」

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