アメリカが許さない3つの同盟
しかしその後も日本はこの動きを止める気はまったくない。3月14日にラヴロフ外相は、安倍首相のロシア訪問を含めハイレベルな交渉を東京で準備している事実を明かした。
ちなみに米外交政策の奥の院である「外交問題評議会」が発行している外交誌『フォーリン・アフェアーズ』などの記事を見ると、米政府が許容できないとする3つの同盟があることが分かる。
- 日中韓+アセアンの共同体
- ドイツとロシアによるロシア-EU同盟
- 日本とロシアの同盟
この3つの同盟ができてしまうと、アメリカの国益に軍事的にも政治的にも挑戦可能な強力な共同体ができてしまうので、アメリカの国益にとっては最大の脅威となると認識されている。
まず(1)だが、これができると東アジアに全世界のGDPの4割を占める巨大な経済共同体ができる。これが安全保障の同盟まで進化すると、どの国もアメリカの軍事力に依存する必要性がなくなるので、アジア全域からアメリカは追い出されることにもなる。
そして(2)だが、これと同じことがヨーロッパでも起こり、ロシアとEUとの決定的な緊張緩和からアメリカの軍事力の必要性はなくなる。
また(3)も日本とロシアとの同盟が締結されると、やはり北東アジアにおけるアメリカの軍事的な存在はまったく必要がなくなる。
これらの3つの同盟が機能すると、アメリカは世界にコミットすることができなくなり、国内に引きこもって孤立するしかなくなると考えられている。孤立するとアメリカの国益は世界の多くの地域で損なわれ、2流国家に転落するというのだ。
この最悪の状況を回避し、(1)(2)(3)の各地域でアメリカの国益を保持するためには、これらの同盟が形成されないように一定程度の緊張関係を維持しなければならない。
(1)であれば尖閣諸島と竹島の領有権争い、(2)は現在のウクライナ紛争、そして(3)は北方領土問題である。これらの問題は、同盟関係の形成を難しくさせるためのいわば装置としての役割を果たしている。
このような事実から見ると、いま安倍政権が急速に進めているロシアとの接近は、オバマ政権は絶対に許容できないはずだ。これを阻止するために、あらゆる方面で圧力をかけてくるに違いない。