fbpx

日本電産・永守社長の投資ルール~本物のバリュー投資家はココを見ている=栫井駿介

日本電産という会社をご存知でしょうか。モーターを中心とする電気機器メーカーです。M&Aに積極的なことでも知られ、他に例を見ないほど多くの会社を買収し、成長を続けてきました。その功績はひとえに創業者である永守重信社長によるものであり、彼の経営・投資手法はバリュー投資を学ぶうえで重要な示唆を与えてくれます。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

日本電産創業社長・永守重信氏に学ぶバリュー投資の神髄

「お買い得」に敏感も、高値づかみはしない

この記事を書くきっかけとなったのが、2016年4月3日付の日経ヴェリタス48-49面に見開きで記されたインタビュー記事です。ここではそこからいくつかの言葉を抜粋し解説します。

機動的なM&Aに対応できるように、2000億円の社債発行枠を設けている。マイナス金利の場合、お金を借りてお金をもらえるという状況だ。

マイナス金利の現状では、企業の借入金利はマイナスにこそならないものの非常に低い水準であり、有望な投資先が見えている経営者にとってはまたとない「お買い得」期間となっているのです。

そのような状況にもかかわらず、多くの大企業は現金を溜め込むばかりでなかなか投資をしようとしません。借入による投資に積極的なのは永守社長とソフトバンクの孫社長くらいです。「お買い得」だと確信したら、迷わずそれを利用することがバリュー投資には必要なことです

それでもそんな高い買い物はできない。何かあったらすぐに減損になるからだ。

一方で、安く資金調達できるからと言って、高い買い物には否定的です。企業も工場も、高く買ってしまったら収益力がなくなった時点で「減損」しなければなりません。これはシャープや商社でも見られる巨額赤字の原因になっています。

バリュー投資で成功するためには、楽観論は禁物です。楽観はバブルを生みます。永守社長は自身を「保守派の急先鋒」と呼ぶほど数字に関して保守的な姿勢を見せています

「保守的」と「悲観的」でも全く意味が異なります。保守的とは、最悪の場合を想定し、そうならないために、あるいはそうなっても大丈夫なように十分な備えをすることです。悲観は行動を萎縮させるだけで何も生みません。バリュー投資家は「楽観」でも「悲観」でもなく保守的であるべきです

リスクを認識し、長期的視点を持つ

20年間の長期でみたら、(日本電産の株価は)38倍ぐらいになっている。短期でみると昨年は村田製作所の方が上がった。最後はどちらが勝つか。彼らはブームに乗ってスマートフォンを当てたが一本足打法。うちは色々やっている。100年後まで生きようと思ったら、いいときはいいが、悪い時はガタンと落ちるとまずい。

自社の株価についても明確な見識を持っています。目の前の株価だけ見れば村田製作所に負けていますが、それがスマートフォンブームによるものであることと、その先の経営上のリスクを十分に理解しています。(村田製作所に関する私の見解はこちら。)

直近の株価の騰落にとらわれず、そこに潜むリスクを認識することは、投資においても欠かせません。バリュー投資家は、ブームに乗った結果株価が高騰して下落リスクの高まった銘柄に手を出すことは厳禁です。

永守社長は別の箇所で「他社が1年でやるところを10年単位で考えている。」とも言っています。経営で重要なのはこの先1年の利益ではなく、10年後に会社がどのような姿になっているか想像することです。株式投資は会社の一部を保有することであり、長期投資家は経営者と同じ視点で考えることが必要なのです。

Next: 売られる理由が明確なものに価値を見出す

1 2
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー