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楽天経済圏は2021年に飛躍へ。携帯キャリアとなった楽天、その強さと弱さの秘密=岩田昭男

ビジネスマンにおすすめは楽天プレミアムカード

ポイントサービスの開始から3年後の2005年、楽天はクレジットカード会社の国内信販を完全子会社化し、楽天カードの発行を開始する。楽天カードは信販系としてはナンバーワンのクレジットカードに成長しているが、「楽天カードマン〜♪」というテレビCMの宣伝効果は大きい。同時に、入会審査が簡単で、会員申し込みがすぐにできる手軽さも受けている。

それからこれはほとんど語られることはないが、買収(子会社に)した国内信販の幹部をカード事業の責任者に据え、それがうまくハマったことが、楽天カードが成功した最大の理由だった。

楽天カードには年会費無料の「楽天カード」の上に、年会費2,200円の「楽天ゴールドカード」、さらに年会費1万1,000円の「楽天プレミアムカード」とある。実はこれもあまり知られていないことだと思うが、楽天カードの次に登場したのはゴールドカードではなくプレミアムカードだった。

プレミアムカードにはプライオリティ・パスという特典がついていて、国内だけではなく海外の空港ラウンジが無料で利用できる。こうした高級感をウリにして発行に力を入れたものの、成績は芳しくなかった。楽天カードは年会費永久無料をうたっているのに、高級カードになった途端に年会費1万円(税別)とはいくらなんでもハードルが高すぎると会員の反発を買った。そのため発行枚数があまり伸びなかったのだ。

そこで考え出されたのが格安のゴールドカードだった。年会費をプレミアムカードよりはるかにお手頃感のある2,000円(同)に設定し、基本カードに比べてポイント還元の優位性を高めた。その結果、ゴールドカードよりもステータス感が得られてラグジュアリー(贅沢)な気持ちになれるプレミアムカードを求める人が増え、いまではゴールドカードよりもプレミアムカードのほうが人気だという。

筆者もビジネスマンにすすめるなら、プレミアムカードを選ぶ。楽天カードはたしかに年会費の負担がなくていいが、プレミアムカードは楽天市場でポイントが最大5倍になる。これはゴールドカードも同じだが、国内外の空港ラウンジが原則いつでも無料で利用できる(ゴールドカードは国内の空港ラウンジが年2回のみ無料で利用できる)。コロナ禍でいまこの特典がほとんど機能を発揮しなくなっているが、いつまでもこのままではない。持っていて損はないはずだ。

西友買収、Suicaとの提携でリアル市場を拡大

楽天カードのこうしたやり方を見ていて筆者が感じるのは、いつも一歩先を行っては失敗する会社だということだ。ただし、いろいろなことに挑戦して失敗はするけれども、しぶとくチャンスを得て成功に結びつける。そんなしたたかさを感じる。

たとえばEコマースが中心事業の楽天は、オンラインの市場だけではなく、リアル市場の開拓にも力を入れてきたが、なかなかうまくいかなかった。一時、ライバル視していたセゾンカードは西友というリアル店舗を持っている。そこで楽天はコンビニに狙いを定め当時のサークルKサンクスに目をつけた。そして首尾よくポイントサービスで提携した。ところがその矢先にサークルKサンクスはファミリーマートに買収され、ファミリーマートの基軸ポイントであるTポイントの軍門に下った。

こうしてサークルKサンクスを追われることになった楽天だったが、折からのQRコード決済ブームが思わぬ追い風になる。「楽天ペイ」がソフトバンクのペイペイに次ぐQRコード決済となって、すべてのコンビニで使えるようになった。これによってリアル市場拡大の足掛かりをつかんだ。

さらに今年の11月には米投資ファンド(KKR)と組んで、西友の株式(の85%)をウォールマートから買い取り、傘下に収めることが明らかになった。いわばリアル店舗開拓の橋頭堡(きょうとうほ)を築くとともに、ネットスーパー構想を前進させることになった。西友のポイントがセゾンの永久不滅ポイントから楽天ポイントにとって代わる可能性も出てきたのである。そうなれば、かつてのライバル、セゾンの牙城を一気に切り崩すことになり、目が離せない。

リアル市場の開拓ということでいえば、今年の5月からJR東日本と提携し、楽天ペイのアプリでSuicaを使えることになったのも大きい。これによって楽天ペイが使える店や場所がこれまでの400万に加えて、全国の鉄道の駅など交通系の電子マネーとして約94万か所で利用できるようになったのだ。

ただし、このサービスを利用できるのはアンドロイド系のスマホに限定されており、アップルと深い関係を築いて新しい展開があるのではないかと期待した筆者にすればいささか物足りず、相変わらず詰めが甘いといわざるをえない。

Next: 楽天ポイントが成功の鍵。「ポイント投資」利用者も拡大中

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