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日米会談に怯える習近平が「台湾・尖閣有事」の賭けに出る確率は?中国衰退の2シナリオ=勝又壽良

習氏の対応に2つの見方

以上のように、習氏にとっては対外政策で深みにはまった感じが強い。

日米首脳会談で、日米が一段と結束する体制ができあがれば、インド太平洋戦略の「コア」が不動という印象を中国に与えるであろう。習氏が、これを冷静に受け入れるのか。さらに凶暴化して、尖閣諸島と台湾へ軍事威嚇を強めるのか。現状では、判断不可能である。

2つの相対立する見方がある。

1)中国国内で、元老から習近平の猪突盲進に危険信号が出ている。いずれ、習氏の行動は沈静化するという合理性を強調する見方である。

2)最近のEU(欧州連合)と中国が、新疆ウイグル族の人権弾圧をめぐり、互いに報復し合っている。EUは怒って、昨年12月末に署名した対中国の総括投資協定について、EU議会が審議棚上げで対抗している。習氏は、経済的な損失でも躊躇なく決断する、どう猛性を強調する見方だ。

上記の通り、2つの見方がある。新興国が覇権国へ対抗する際、(1)のような合理的判断に基づく行動を期待できない。日本が、米国と太平洋戦争を始めた状況は、現在の中国の置かれた状況と寸分違わないことに注目すべきである。

日本は、満州撤兵をめぐり米国と対立した。米国は、経済制裁として対日輸出禁止(石油・鉄くず)を科した。山本五十六連合艦隊司令長官は当初、「米国から石油を買いながら戦争できるか」と対米戦争を否定していた。だが、陸軍は満州撤兵を拒否して、開戦を急がせた事実がある。

中国へ上記の事情を当てはめれば、日中の置かれている事情は瓜二つである。

中国は、国際法上で所有権のない南シナ海と尖閣諸島の領有権を主張する。南シナ海では、他国領有の島嶼を占領し埋め立て軍事基地にしている。戦前の日本が、満州へ軍事進出したケースと同じだ。中国は、占拠を既成事実化している。米国艦船が、南シナ海を航行すれば非難して、公海自由の原則を否定する行動に出ている。

これは、中国が南シナ海を「内海」扱いしている証拠である。

中国は海洋国家へ楯突く

米国は、こういう横暴な振る舞いを絶対に見逃さず、必ず「軍事処置する」国家である。

それは、米国が海洋国家であることだ。中国は、こういう海洋国家の歴史を知っておくべきだろう。日本も海洋国家としての歴史を持つ。

中国は、典型的な大陸国家である。大陸国家は、主観的・排他的という特性ゆえに、海洋国家との共存が困難な面を抱えている。海洋国家の国家戦略は、国際的な関わりの中で国民的生存・繁栄を手にする生き方だ。国際的な協調があって初めて、自国の平和と繁栄が確保されると認識している。

世界では、日本、米国、英国などが典型的な海洋国家として位置づけられている。インド太平洋戦略は、海洋国家の日米が主軸となって、大陸国家・中国の海洋進出の防波堤になろうとしている。

中国が、大陸国家の特色である「主観的・排他的」というドグマに染まっている以上、日米などと摩擦を起こさずに共存できる可能性は、残念ながら極めて低いといわざるを得ない。

インド太平洋戦略は、海洋国家と大陸国家の歴史的な摩擦現象である。これが、発火して火災になるか、小競り合い程度で終息するか。ひとえに、中国の出方一つに掛かっている。

Next: 米国は繁栄し、中国は衰退する。習近平は未熟な半導体で対抗できるか?

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