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最強経済を謳歌する米国で始まった「強烈なインフレ」は世界と日本に何をもたらすか?=高島康司

社会を混乱させる悪循環

アメリカは、2020年5月にミネソタ州、ミネアポリスでジョージ・フロイド氏が警察官によって殺害されてから、全米5,000カ所で人種差別の撤廃を要求する「BLM」運動が、燎原の火のごとく盛り上がった。過激な極左の「アンティファ」などの扇動で、激しい暴力的な抗議も各地で行われた。

それに、トランプの熱烈な支持者である白人至上主義者などとの激しい衝突が頻繁に起こった。ポートランド、シアトル、サンフランシスコ、シカゴ、ニューヨーク、ミネアポリスなどの大都市の中心部は騒然とした状況に陥った。

警察官は憎しみの対象となり、殺害されたり暴力を奮われた。また多くの都市で警察予算が削減された。

その結果、警察官の退職や警察署の規模が縮小され、都市の治安が悪化した。どの主要都市でも殺人や強盗などの犯罪件数は極端に増加し、非常に危険な状態になった。

これに対処するため、多くの市民は銃を購入し、銃の販売は一気に増加した。

そして、かねてから拡大していたリモートワークが追い風となり、都市の中心部の高価なアパートや住宅から、人々が治安のよい周辺の州の郊外に戸建てを購入し、移動したのである。この結果、大都市中心部の地価は下落し、郊外の地価が急上昇するといった逆転現象が見られるようになった。

一方、人口が減少した都市の税収は大幅に減った。これが背景となり、警察予算がさらに削減された結果、治安が一層悪化するという悪循環になった。

住宅価格高騰といまも続く悪循環

これは2020年の状況である。この光景を主要メディアなどを通して目にした我々は、アメリカの分断の深刻さを思い知った気分になった。

その分断の象徴として起こったのが、今年の1月6日に発生した米連邦議会議事堂への侵入事件であった。

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いまバイデン政権に変わり、巨額の経済政策とワクチン接種の拡大を背景にして、急速な経済回復が進んでいる。アメリカは元に戻りつつあるような印象を受ける。そのため、今年の1月まで続いていたアメリカ国内の騒然とした状況を我々は忘れがちになる。もうこれは、トランプ政権時代の過去の出来事のような印象を持つ。

しかしながら、実は社会の存続さえ脅かしかねないこの悪循環はいまも続いている。ただ報道されなくなっただけなのだ。

最近FBIが公表したデータでは、全米37の主要都市で、昨年の3月よりも殺人件数は平均で20%も増加していた。

また銃の販売数も、分断と混乱が拡大した昨年を上回っている。ほとんどのアメリカの州では、銃を購入する場合、購入者の身元が確認される。この確認を担当するのは全米のFBIの支局である。銃砲店から送られる身元確認の件数から、銃の販売数をおおよそ予測できる。今年の2月の身元確認要求を前年同月比で見ると、23%も増加している。市民は護身用の銃の購入に、いまだに殺到しているのだ。

そして、銃を購入している人々を見ると、アメリカが荒れた昨年と同じような傾向があるという。これまで銃などはまったく手にしたこともない主婦やOL、また普通のサラリーマンのような人々が銃を購入している。

やはりこれは、バイデン政権になってもアメリカの都市部の治安悪化は継続し、先に記した悪循環がまだ存在していることを示唆している。

Next: 高い経済成長で埋もれるアメリカの闇。社会不安はいずれ爆発する

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