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最強経済を謳歌する米国で始まった「強烈なインフレ」は世界と日本に何をもたらすか?=高島康司

インフレを招いた「住宅の需要増大」

そうしたなかでも、インフレのけん引役のひとつとみなされているのが、特に郊外の住宅に対する需要の大きな増大だ。いま住宅は飛ぶように売れている。

以下のような要因がその原因として指摘されている。

1)リモートワークの普及により進む郊外移転
2)住宅ローンの金利低下
3)ミレニアル世代の持ち家需要の増大
4)戸建ての慢性的な供給不足

新型コロナウイルスのパンデミックの行動規制によってリモートワークが一般的になったところに、かねてからの金融緩和策によって住宅ローン金利が低下したため、特に30代のミレニアル世代を中心に条件のよい郊外の戸建ての需要が高まったということだ。もちろん、国民の直接現金給付なども含むバイデン政権の経済政策も住宅の購買を後押しした。

そして、一度住宅価格が上昇すると、投資のための需要も活発になるため、さらに住宅価格が上昇するという循環になった。

こうした住宅市場の活性化は、材木などの原材料の価格の大幅なインフレを引き起こしている。特にインフレ幅が大きいのは、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で需要が大きく落ち込んだため、供給量を減らしていた材木の価格高騰である。特に需給が逼迫している南部テネシー州のような地域では、なんと3倍にもなっている。

これは材木だけではない。住宅建設は、周辺産業の多い裾野の広い分野である。住宅に関連したあらゆる産業で需要が増加するので、住宅建設は製品価格を押し上げる、いわばインフレのけん引役にもなっている。

住宅価格高騰の暗い背景

もし、住宅価格の高騰が上で示したような原因でもたらされているのであれば、それは健全なことだ。

新型コロナウイルスのパンデミックで加速したリモートワークは、住宅需要を増大させ、経済成長にプラスの効果をもたらしたと楽観的に解釈できる。

パンデミックが終わってもリモートワークは定着するので、バイデン政権の経済対策と低金利政策に後押しされ、アメリカの力強い経済成長をけん引するこという見方だ。

しかし、調べて見ると、そんな単純なものではないことが見えてくる。実は住宅価格高騰の背景には、「アメリカの一層の分断と混乱」を示す状況が背景にあるのである。

Next: 治安悪化で都市部から脱出。住宅価格高騰と今も続く悪循環

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