大村秀章愛知県知事へのリコール活動における署名偽造事件に関して、関与が噂されていたリコール運動事務局長で元愛知県議の田中孝博容疑者が、19日に逮捕された。
報道によると、逮捕容疑は地方自治法違反(署名偽造)。今回のリコールでは、約43万5千筆の署名が集まっていたが、その後の県選挙管理委員会による調査により、約83%にあたる約36万2千筆に無効の疑いがあると判明。愛知県警が同法違反容疑で捜査していた。
また同日には田中孝博容疑者以外に、その妻であるなおみ容疑者と息子の雅人容疑者、さらに団体事務局で経理などを担当していた渡邉美智代容疑者も逮捕。ネット上では「家族総出での署名偽造かよ」と、驚きの声が多くあがっている。
田中事務局長、妻、次男逮捕。
家族総出かよ https://t.co/ZqPmpEBrwk— TISM! ティーアイエスエム! (@TISM06235734) May 19, 2021
家族総出で署名偽造してる光景を想像すると悲しくなるよな
— ジャポニスタン (@japonistan) May 19, 2021
常滑市議の辞任を契機に関与認める発言に一転か?
集まった署名の大半に偽造が疑われ、さらには多数のアルバイトを動員しての署名簿への書き写しが明るみになった今年2月の時点では、署名偽造への関与を頑なに否定していた田中孝博容疑者。
しかし今年4月になると、リコール事務局の幹部を務めていた山田豪常滑市議が、「偽造署名に深く関与した」と認めたうえで、議員を辞職。山田氏は「田中孝博事務局長の指示で昨年10月末~11月上旬、名古屋市内で同一筆跡の大量の署名簿に自ら指印を押した」と、田中氏の指示で偽造に関わったことを明らかにしていた。
このことも影響したのか、それまでは署名偽装への関与を一貫して否定か「答えられない」としていた田中氏も、一転して認めるような発言をするように。田中氏は、違法との認識は無かったとしながらも、「予定通り署名が集まっておらず、焦っていた」と語るとともに、SNSなどで署名集めの順調さを発信していた高須クリニックの高須克弥院長に「恥をかかせるわけにはいかなかった」とも発言。さらに逮捕の前夜には「リコールに参加し関わったすべての皆さまに対して、今の状況を踏まえると非常に申し訳なく思います」と、話していたという。
これらのコメントをみると、田中氏はリコール運動において自分より立場が上の人物、要は高須院長や河村たかし名古屋市長などからの「直接の指示」はなかった、あるいはそういうことにしたい思惑のようだ。現に今回の逮捕を受けて、大村知事は「河村氏の発案で始まった。その成れの果てが偽造、捏造、犯罪行為だ」と、河村市長が責任を取るべきだと断じたものの、対する河村市長は「偽造に気付けなかったことは情けなく、その責任は感じている」と発言し、署名偽造への自らの関与は否定し続けている。
ちなみに、今回のリコール運動の契機になった展示会「表現の不自由展・その後」だが、今年7月に名古屋市内で再展示されると先日報じられている。以前はその開催費が税金で賄われたことから大きな波紋を呼んだが、今回は市民団体の主催によって展示されるとのこと。ただ、開催場所が、名古屋市の外郭団体のひとつである名古屋市文化振興事業団の運営施設ということで、河村市長から何らかのリアクションがあるのかにも注目が集まる。
維新に対しては「尻尾切り成功か?」の声
このように河村市長や高須院長の責任も取沙汰されるなか、完全に逃げ切りに成功した感があるのが「維新」だ。
今回逮捕された田中孝博容疑者にくわえ、リコール事務局の幹部を務めていた山田豪氏も、もとはといえば維新所属の議員。現在はすでに両者ともに維新からは離れているようだが、リコール運動時には維新に所属していたのは間違いなく、さらにリコール活動の初期には吉村洋文大阪府知事が応援を明言したこともあって、先の署名偽造が発覚した際には維新の関与も大いに取沙汰されていた。
しかし、今回の逮捕に関する報道で維新関連が露出したのは、日本維新の会の県総支部にあたる「愛知維新の会」の代表が、「維新とは関係ない個人の問題」とコメントしたと伝えられたぐらいで、維新の関与や責任どころか、逮捕された田中氏が元維新だったことすらあまり報じられず。このような状況に対して、ネット上では「トカゲの尻尾切り大成功」「維新の“身を切る”とはこのことか」との声が多くあがっている。
文中に維新の維の字もないですね。維新にすればトカゲの尻尾切りに成功して大勝利でしょう。https://t.co/ijLSujBxHM
— a pair of glasses (@pair_glasses) May 18, 2021
記事に維新って文字がまったく出てこないから、トカゲの尻尾切り大成功ですね! https://t.co/dBTXmF8LLR
— sabakanLv5 (@sabakan_Lv5) May 19, 2021
今後の捜査の進展次第でもあるが、もし仮に田中氏による一連の言い分が通るようなら、今後河村市長や高須院長そして維新に対して、署名偽造への関与が問われるといった展開は、どうやら望み薄といった情勢のようだ。
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