業界全体で加速する「高級化」路線
となると、いよいよ利益を稼ごうと思ったら、やはり「高級化」路線になります。
技術というのももちろんなんですが、いかに「カッコイイ」物を売るか、雰囲気や空気をいかに売るか……ということにかかってくるのではないかという風に考えます。
それでトヨタというと、ガソリン車はもちろん、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド、そして電気自動車もこれからどんどん出していくという計画をしています。
これらに単なる技術競争ではなくて、いかにかっこいい雰囲気という付加価値を付けられるかどうかが、トヨタの今後の鍵を握ってくるという風に考えています。
あらゆるタイプの自動車を出していますけれども、やはり高級化、クラウンだったりアルファードだったり、SUVのあたりでもそうですが、この辺のラインナップをどんどん増やしていくのではないかと考えられます。
トヨタ株はまだ買えるのか?
さて、このような高級化路線が上手くいったとして、トヨタの株価は上場来高値を更新しましたが、今からでも「買い」なのでしょうか?
今後の業績をシミュレーションした場合に、台数自体はそんなに増えないと思われるので、現状の30兆円ぐらいが続くのではないかなというところです。
それに対して、現状8%という営業利益率が、高級化によって10%ぐらいまで上がったとします。すると営業利益が3兆円。そして持分法利益なんかもありますので、経常利益3.6兆円で、これに対する純利益2.7兆円ぐらいという推測ができます。
これに対してPER10倍で時価総額27兆円、15倍で40.5兆円という数字が出ます。
競合のPERに関しては、フォルクスワーゲンが12倍、ダイムラーが10倍、BMWが9倍、GMが9倍、ホンダが10倍と、大体10倍から15倍程度というところになります。
現状トヨタの時価総額というところにあります通り、28兆円というところになってきます。
PER10倍ですから考えられる範囲の中には入っていると思うのですが、今後も上手く業績が伸びてきて、さらに今の自動車業界はPER10倍程度ですから、わりと慎重に見極められているのだという風に思います。
当然、それは電気自動車の普及によって競争が激しくなっているからだというところになりますが、そこをクルマの雰囲気だったり、安全性などは旧来の自動車会社が勝ってくるわけです。
この辺が評価されるようになると、今の28兆円というところから3〜4割のところまでは、十分に想定できるような状況ではないかと思います。
もちろん今後の競争のことですから、どうなるかはわかりません。けれども、持っておいて悪くないような状況であるという風に考えています。
今後の自動車業界からますます目が離せませんので、注目していきたいと思います。
(※編注:今回の記事は動画でも解説されています。ご興味をお持ちの方は、ぜひチャンネル登録してほかの解説動画もご視聴ください。)
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。
『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』(2021年5月22日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
無料メルマガ好評配信中
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
[無料 ほぼ 平日刊]
【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。