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中国で即時配送が急拡大「1時間以内のお届け」で何を買っている?日本では広がらぬワケ=牧野武文

注文から6分後に口紅をお届け!

京東が、即時配送に関心を示しているのは、もともと京東は物流に力を入れてきた企業だからです。

2020年の11月11日の独身の日セールでは、消費者がスマホで注文した6分後に商品を配達することに成功して話題となりました。もちろん、倉庫から出荷をしていたらそんなことは不可能なので、あらかじめ需要予測を立て、売れ筋の商品は配送ステーションに在庫を確保していたのです。

それがうまく当たり、黒竜江省のある女性が口紅を注文したところ、そのわずか6分後に京東のスタッフから「今、お宅の前にいますので、ドアを開けてください」という電話が入りました。女性が驚いてドアを開けると、本当に京東のスタッフで、注文した口紅が配達されました。

「すぐに届ける」が信頼の源泉

京東は配送時間にこだわる企業で、現在、ほぼ全国の地域で「211限時達」(2つの11時が締め切りになる配達の意味)と呼ばれる半日配送を実現しています。午前11時までに注文をすれば当日中、それ以降、午後11時までに注文すれば、翌日午後3時までに配送するというものです。

この211限時達の実現は簡単ではありません。元々、京東は創業者の劉強東(リュウ・チャンドン)が、1998年に北京市の中関村に開いた「京東マルチメディア」という商店が原点です。CD-Rが主力商品で、次第にCDドライブなどの電子製品なども手がけるようになり、2001年には店舗数が12店舗となり、成功をしていました。

しかし、2003年にSARSが流行したことで、京東マルチメディアは大きな打撃を受けます。感染者数は新型コロナと比べれば2桁少ない程度ですが、致死率は高く、近代中国では初めてのアウトブレイクであったために、多くの人が外出を控えたからです。

その頃、お店に電子メールで注文を送って、自宅やオフィスなどに届けてもらうというECの前身のようなことが細々と行われていました。店舗営業が壊滅的なので、劉強東はこれしかないと思い、当時人気のネット掲示板に広告を出し、電子メールでの注文を受け始めました。

しかし、まったく注文が入りません。そこに掲示板にこういうコメントがつきました。「京東って知っている。中関村にある店で3年ぐらい光ディスクを買っていたけど、ここでは1回も偽物をつかまされたことがない」。その日のうちに6件の注文が入りました。これが京東の原点になっています。

当時、記録媒体のCD-Rは質の悪いものも流通していました。100枚単位で安く購入できるものの、10枚のうち、2、3枚は書き込みに失敗するということが珍しくなかったのです。しかし、京東はそのような劣悪商品は扱わずに、正規ブランド品だけを扱いました。また、CD-Rのような記録媒体は、用意周到な人は買い溜めをしておくかもしれませんが、多くの人は記録をしようと思ってCD-Rがないことに気がついて買いに行くということをします。ですから、すぐに届けなければなりません。

「本物を売る」「すぐに届ける」。この2つが京東の信頼の源泉になっています。ですから、当然、即時配送には強い関心を持つのです。

Next: 「短距離EC時代」がやってくる。日本では必要とされていない?

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