どんな人が使っている?
しかし、本当にそうなのか。短距離ECは、せっかちな人が使ったり、急ぎの場合に使うだけで、ECの主流にはならないのではないかという考え方もあると思います。
ここを明らかにするために、達達の統計資料から、利用者の属性や利用動機などを紹介しながら考えていきます。また、即時配送を利用した店舗ECは簡単なようで、実は難しい面もあります。
実際、香港初のおしゃれなドラッグストアとして人気のワトソンズが中国で対応を失敗して、問題を起こしています。このような即時配送、店舗ECの対応の難しさについてもご紹介します。
即時配送は、コロナ禍の外出自粛により広がりを見せ始めましたが、それ以前から拡大の兆しはありました。即時配送サービスは、スマホで商品を注文し、1時間程度で配送してもらうか、あるいは自分で店舗に取りにいくこともできます。行動半径の広い若い層は、店舗受け取りもよく利用します。そんなことをしなくても直接店舗に行って購入すればいいように思えますが、いきなり店舗に行くと在庫がないこともあるため、先に予約して取置きを頼んでおく感覚です。また、地下鉄の中などで注文をすれば決済まで行われるので、店舗に行っても、商品の場所を探す必要がない、支払いをしなくてよく受け取るだけでいいなどメリットがあるからです。
しかし、即時配送の市場が年々拡大する中で、やはり配送を利用する人が増え続けています。配送先は自宅だけでなく、オフィスでもかまいませんし、1時間ほど待っていることができるのであれば病院や飲食店でもかまいません。
2021年の市場規模は3.316兆元(約57兆円)と予測され、即時配送の中で宅配を利用する人は63%に登ると予測されています。
このような即時配送を利用する主力消費者は「30代の働くお母さん」です。利用者の女性比率は67%にのぼり、利用者の年齢層は30代が主力になっています。時間がない、時間があっても子どもがいるため動きづらいという人が使っています。
利用者の中で子どもがいる人(同居)は全体の75%で、子どもの年齢を尋ねると、6歳以下が39%、12歳以下が31%で、小学生以下の子どもがいる人が70%にもなりました。この30代女性が核となり、男性、中高年へと利用者が広がっています。
特徴的なのは、10代・20代の利用は一定数いるものの、あまり増えていないということです。こういう新しいサービスは一般に20代が飛びつくことが多いですが、若い世代は行動範囲が広く、自宅にいる時間が短いために、即時配送してもらうよりは自分で取りに行くことを好むのだと思われます。
配送場所は74%が自宅でしたが、オフィスも8%あります。また、新型コロナの影響でホテル利用が低迷していることを考えると、利用が戻るにつれ、ホテル利用も伸びてくると期待されています。
即時配送で購入される商品は、圧倒的に医薬品が多くなっています。夜にお腹が痛くなった、頭痛がするという場合に注文をするのです。また、面白い例では、高齢者の診察に付き添った人が、高齢者を薬局まで歩かせるのは忍びないので、病院から処方箋をスマホ撮影して、病院に薬を届けてもらうという例もあるそうです。
2020年は新型コロナの影響もあって、健康や衛生に強い関心が持たれたこともありますが、京東到家で2019年と2020年の注文量を時間帯別に比較すると、最も伸びたのは深夜0時、1時、2時の3時間で20%以上の伸びを示しています。この時間帯の注文は圧倒的に医薬品が多くなります。
「即時配送」を使う理由と買われた商品
京東到家では、各商品の購入者に購入利用のアンケートを取り、どのような商品がどのような理由で購入されたかの分析を行なっています。それによると、購入の理由は主に6種類あることがわかりました。
1. 日常購入。普段の買い物の代わりに利用するものです。
2. 補充購入。シャンプーが切れていたことに気がついた場合など、「明日買わなければ」と考えてしまうと、明日になって買い忘れてしまうことがしばしばあります。それで、気がついた時に、すぐに注文をしてしまいます。
3. 緊急購入:急に必要になった医薬品、家電製品(電池、電球など)などを購入します。
4. セール購入:セールが行われている場合、通常のECよりも安く購入できることがあるための購入です。
5. お試し購入:知らない商品を見かけた時にお試しで購入するものです。知らないスナック菓子などを見かけた時に、すぐに食べてみることができます。
6. プレゼント購入:知人友人にプレゼントをするために購入します。通常のECだと、相手の生活パターンによっては受け取りが面倒になることがありますが、即時配送であれば、相手に確認をしてから注文すれば、確実に渡すことができます。
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・配送業者の構造改革が難しい
・消費者の信頼を得られるか
・日本でも一般商品のデリバリーが本格化
・アリババ物語その74
・今週の「中華IT最新事情」
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- vol.077:あらゆる商品を1時間以内にお届け。即時配送が拡大する理由とその難しさ(6/21)
- vol.076:無人カート配送が普及前夜。なぜ、テック企業は無人カートを自社開発するのか?(6/14)
- vol.075:アリババをユーザー数で抜いて第1位のECとなったピンドードー。そのビジネスモデルのどこがすごいのか?(6/7)
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- vol.073:個人商店を系列化する社区団購。主要テック企業が資本を投下し、競争が過熱をする理由(5/24)
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- vol.059:新型コロナ終息後の消費行動はどう変わったのか。5つのキーワード(2/15)
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- vol.047:ライブコマース利用者の4類型と5つの対応策(11/23)
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- vol.029:店舗、ECに続く第3の販売チャンネル「ライブEC」(7/20)
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- vol.023:即時配送が変える小売業態。新小売と社区団購(6/8)
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- vol.021 感染拡大で実戦投入された人工知能テクノロジーの数々(5/25)
- vol.020 経済復活の鍵は「ライブEC」。感染拡大から広がる新たな販売手法(5/18)
- vol.019 生き残りを賭ける飲食業。鍵は「外売」(デリバリー)(5/11)
- vol.018 ニューノーマル。終息後の新日常は、以前とどう変わるのか?(5/4)
- vol.017 アリババとテンセント。ECビジネスをめぐる衝突(4/27)
- vol.016 敗走するアマゾン、カルフール。理由はグローバルとローカルの衝突(4/20)
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- vol.014 1日で4.1兆円売り上げる「独身の日」は、どのように生まれたのか?(4/6)
- vol.013 1日で420億円の商品を売る。網紅の桁外れの販売力の仕組み(3/30)
- vol.012 広告メディアとしてのTik Tok。その驚異のコンバージョンの秘密(3/23)
- vol.011 人口ボーナス消失とZ世代。経済縮小が始まる(3/16)
- vol.010 中国テック企業は、新型コロナとどう戦っているか(3/9)
- vol.009 潜在顧客を掘り起こし、リピーターを育成するモバイルオーダー(3/2)
- vol.008 新小売戦略の要となったフードデリバリー「外売」(2/24)
- vol.007 ミニプログラム活用で新規顧客を獲得する店舗小売(2/17)
- vol.006 中国のEVシフトは成功なのか。それとも失敗なのか?(2/10)
- vol.005 第2位のECに浮上した拼多多とは何ものか?(2/3)
- vol.004 ファーウェイと創業者、任正非(1/27)
- vol.003 シェアリング自転車は投資バブルだったのか(1/20)
- vol.002 アリペイとWeChatペイはなぜ普及をしたのか(1/13)
- vol.001 生鮮ECの背後にある前置倉と店倉合一の発想(1/6)
『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』(2021年6月21日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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