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「悪夢の現金払い」へ逆戻りか。PayPay“手数料禍”は日本経済に致命的、政府が今なすべきことは?=岩田昭男

【提案】有料化によって生じる手数料を国が補償あるいは補助してはどうか?

考えられるシナリオはいくつかある。1つは、仮に有料化したとしても、現在の加盟店がほとんどそのまま残って定着するというケース。もう1つは、有料化したとたんに多くの加盟店が逃げだしてしまうというケースだ。

どちらのケースになるのかを予測するのは難しい。筆者の考えは後述するとして、ここではこんな提案をしてみたい。

有料化によって生じる手数料を国が補償、あるいは補助するということだ。

コロナ禍によって多くの業種の事業者が疲弊している。これまでコロナ禍で苦しむ小売店や飲食店に対し、政府は満足な補償をしてこなかった。手数料の有料化は、苦境に陥っている加盟店にトドメを刺すことになりかねない。

加盟店が負担する手数料のうちの2%分程度の補助、もしくは補償を2年間くらい行い、経済状況が好転していれば取りやめる。この程度の支出は政府にとって痛くも痒くもないはずだ。

10月から有料化に踏み切るPayPay

政府にはこの提案にぜひ耳を傾けてもらいたいところだが、それはさておき、手数料の有料化はPayPay次第といっていい。

d払いにしろauPayにしろ、PayPayが有料化に向けて舵を切ることがはっきりすれば、いつまでも実質無料を続けてなどいないだろう。

では、PayPayは決済手数料をいつから有料化するのか。

実は9月末までは無料で、10月から有料化するというのは、早くからの周知の事実だ。ただPayPayが明言していないだけだ。ここにきてようやく、8月に正式発表するのではないかといわれている。環境が整ったら正式表明があるだろう。

キャッシュレスの阻害要因は高い手数料

経産省は、2019年10月からの消費税増税にあわせてキャッシュレス決済のポイント還元事業を行った。

このとき経産省は決済手数料を3.25%以下に抑えた決済事業者に対しては、手数料の3分の1とポイント還元分の原資を補助した。つまり、手数料率の基準を示して、その基準に従うようにアメを与えて誘導したのである。

日本政府は2010年代の中ごろから「キャッシュレス化」を国策として進めてきた。そのかいあってか、当初13%程度だったキャッシュレス決済比率が、現在では30%くらいまで高まっている。

この過程のなかで日本でキャッシュレス化が進まない理由として、治安の良さや根強い現金信仰などさまざまなことが言われたが、経産省が最近になって強調しているのは、「キャッシュレス決済の手数料が高い」ということだ。販売業者やサービス業者が高い手数料を敬遠して、キャッシュレスに二の足を踏んでいるというのである。

経産省の調べによれば、クレジットカードの手数料料率は高低の幅があるものの3%くらいが多い。前述のポイント還元事業で示した3.25%は、こうしたデータから導き出されたものだろう。

経産省は3%という数値は、外国に比べて高いのでもっと下げるべきだとして、クレジットカード会社や決済事業者への下げ圧力を強めている。

PayPayが手数料の有料化に踏み切った場合、1.5%~2%台の料率になるのではないか。すでに国際ブランドのVISAとマスターカードは経産省の意向を受け入れて、今年の4月以降、2.7~2.9%への引き下げを決めた。

Next: PayPay加盟店は手数料有料化に耐えられるか?

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