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「悪夢の現金払い」へ逆戻りか。PayPay“手数料禍”は日本経済に致命的、政府が今なすべきことは?=岩田昭男

PayPay加盟店は手数料有料化に耐えられるか?

日本政府のキャッシュレス化推進の動きにいち早く反応したのは、コンビニや大手外食チェーンだ。キャッシュレス化のピークは2019年だった(東京オリンピックが予定通り開催されていれば、2020年が外国人観光客目当てのキャッシュレス化が一段と進んだエポックメーキングな年になった可能性が高い)。

筆者が定点観測している東京・高田馬場では、ファミリーマート、ローソンなどに最初にキャッシュレス決済が導入され、それから大戸屋(定食チェーン)、しまむら(衣料チェーン)などが続いて、それからラーメン店や居酒屋をはじめとする個人商店へと広がっていった。

個人商店の間では手数料無料のPayPayの人気が高く、導入する店がどんどん増えていくのを目の当たりにした。「PayPayの営業マンが毎日のように来てくれて、面白い話を聞かせてくれたり、無駄話をしては帰っていく。すぐにすすめられるままに加盟店になった」と取材先でよく聞かされた。

最近できたタワーマンション近くの理髪店の店主もそのうちの1人だった。場所柄、富裕層が多く、料金も高めの設定だが、「アメックスやダイナースといったクレジットカードで払えないか」と訊かれることが多くなり、PayPayだけではなくクレジットカード決済も導入したという。

この理髪店はいってみれば数少ないキャッシュレスの成功組だ。PayPayの手数料が有料になってもさして気にしないだろう。

しかし、この理髪店はあくまで例外であって、脱落していく加盟店が続出するに違いない。

おそらく1%でも払えない、払いたくないという店が多いだろう。一時的に休業している店では今後どうするかを、廃業を含めて真剣に考えているはずだ。

考えるには十分すぎるほどの時間があった。休業要請が長引くにつれ、店を続けたいという意欲がなくなってしまった店主や経営者が増えている。

PayPayも手数料無料のままでは生き残れない

ここで、政府が手数料を補償するという筆者の提案を思い出してほしい。提案が実行に移されれば、加盟店から見ればこれまでと同じように手数料無料が続くことになる。いまは非常時だからこうした救済措置も許されるはずだ。

もちろん、いつまでも続けるわけにはいかない。PayPayとしても手数料無料のままではQRコード決済サービスがビジネスモデルとして成り立たなくなる。

シェア55%で他を圧倒するPayPayだが、同社の2021年3月期決算は約720億円もの営業損失となっている。つまり本業でまったく儲けることができず、巨額の赤字を出しているのだ。

どんなにユーザーや加盟店が増えても、利益が出なければ企業として存続できない。そう考えると、手数料の有料化はPayPayにとって不可欠であり、越えなければならない壁ということになる。

Next: 今秋からキャッシュレスの勢力図が塗り替わる?気になる各社の動き

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