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なぜ退職金で住宅ローン一括返済は危険?試算でわかった利息軽減効果より大きなリスク=牧野寿和

繰り上げ返済した場合、「利息軽減効果」はいくらになる?

Aさんが考えている住宅ローンの繰り上げ返済の内容は、以下の通りです。

<現在の住宅ローンの状況>

・住宅ローンの完済予定年齢:70歳
・現在の住宅ローンの残債:8年(96回)分
・毎月の返済額(利息分も込):8万4,686円

従って、今後の返済総額は、8万4,686円 × 96回=814万7,328円となります。

この814万7,328円を一度に繰り上げて返済する。つまり、完済することです。

<繰り上げ返済する効果>

繰り上げ返済することで、予定より8年早く、62歳で完済することができます。

利息の軽減額は、「ローン返済表」の「利息」の欄の記載額6,573円以降325回から420回71円まで足していくと、「31万9,814円分の利息」の支払いが、軽減されることになります。

ほかに、完済後に、抵当権を抹消登記といった費用が必要になります。詳細は、住宅ローンを契約した契約書や担当者に、確認した方が良いでしょう。

完済したあと、手持ちの現金はどうなる

住宅ローンを完済すれば、借金の返済が終了して、気持ちは楽になるでしょう。またご自宅は、自分のものになります。負債もなくなり、不動産資産を所有していることになるのです。

ただし、手持ちの現金が無くなります。

今回のAさんの場合は、繰り上げ返済に使った約815万円の現金が、なくなったことになります。

ちなみに、Aさんが毎月20万円の家計支出で、生活をしていたのなら、815万円 ÷ 20万円 = 40.75。約3年4カ月分の家計支出額を、一度に住宅ローン返済に使うことになります。

完済後、急に現金が必要になったら?

Aさんが、住宅ローンを完済後、急にまとまった現金が必要になったら、住宅ローン返済後でも、その分の現金を持っていればよいのですが、なければ、用立てする方法として、クレジットカードのキャッシングや、カードローンで借りることになるでしょう。

あるカードローンで、上記の住宅ローンの返済額と関連付けるため、借りる金融機関などで返済の条件は異なりますが、下記のように、62歳から8年間の返済で、800万円を借りることができたとします。

・金利:年3.0%
・返済期間:96回(8年)

の条件でローンを組んだとします。

・毎月の返済額:93,837円(84,686円)
・返済総額:9,008,311円(8,147,328円)
・その内利息分:1,008,311円(319,814円)
※括弧内は、上記の住宅ローンを完済したときの内容です。

つまり、住宅ローンを繰り上げ返済しないで、当初の予定通り35年間で完済した場合と、完済後、急に現金が必要になり、繰り上げ返済に使った金額とほぼ同額をカードローンで借りた場合の比較をしてみた結果です。

住宅ローンよりカードローンの方が、利息が高いため、毎月の返済額が高くなること。住宅ローンの返済末期は、利息より元本分を返済する割合が大きいことから、このような比較になります。

Aさんは、この比較した数値を確認して、住宅ローンを62歳で完済するのか、決めても遅くはありません。

念のために、住宅ローンは住宅に関連する費用に使うためのローンです。従って、この場合は借りることはできません。

Next: 定年後まで返済が続くローンは危険。借り始めの計画が最重要

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