奨学金は好条件
そもそも奨学金のメリットは、
・保護者が低所得でも学業の機会が開かれる
・無担保で約15年という長期間借りられる(保証人・連帯保証人は必要)
・無利子もしくは低利
・就学中は利払いすら不要
という、大盤振る舞いな好条件です。これが仮に事業主の読者なら、こんな条件で借りられるとはなんて優遇されてるんだ、と感じるはずです。
そして、これは他の借金にも言えるのですが、最初から良い借金と悪い借金が決まっているわけではありません。良い借金にできる人と、悪い借金にしてしまう人の両方がいるというだけだと思います。
たとえば私は借金をして不動産投資をしていますが、家賃収入から返済額を引いた残りが手取りとなって、私の収入を増やしてくれています。
一方、新しい服やブランドバッグが欲しいからと借金すれば、返済は自分の収入の中からですから、生活が苦しくなるようなものです。
底辺からでも這い上がれるのが奨学金の素晴らしさ
当時の私の状況を少し紹介します。私は、父親が希望した高専(高等専門学校)への進学を拒否し、東京の大学に進学しようと高校は普通科を選択しましたから、学費の支援も仕送りもないと言われていました。
だから学費も生活費もすべて自分で捻出しなければならず、奨学金を借りることは大前提でした。
それで無利子の第一種奨学金を借りられたのですが、当然ながら卒業後は返済が始まるという説明は受けました。
母親からは「利息がつかないからちょっとオトクよ」と言われ、当時は利息はなんのことやらという感じでしたが、安いなら良かろうという程度の認識でした。
しかし自分の貯金は受験料と東京での宿泊費・交通費でほぼ使い切ってしまい、初年度納入金が足りません。どうしたものかと思案していたら母親から新聞奨学生制度を紹介してもらい、新聞配達をしながら進学することにしました。入学金などを立て替えてくれ、格安の寮に住めて上京の新幹線チケットも出してくれて助かりました。
学生時代はちょうどバブルの頃で、バイトの時給も高いし先輩たちも二桁の内定をもらっていましたから、このままなんとかなるだろうと思っていました。
しかし私が就職活動を始める直前にバブルが崩壊し、就職氷河期第1号になってしまったのです。私は結局どこにも就職が決まらず、卒業式を迎えます。
卒業後はフリーターとして、居酒屋やビル清掃のアルバイトで細々と食いつなぎました。だから奨学金の返済が始まる通知が来たときも、とても払えないと旧日本育英会に電話し、返済猶予制度で返済開始を遅らせてもらいました。
その半年後くらいにようやく就職が決まり、その後はコンビニエンスストア本部、外資戦略系コンサルを経て独立起業し、いまに至ります。
という感じで、底辺から這い上がった経験があるがゆえに、私には生存者バイアス(自分の特殊な経験や価値感を一般化しすぎる)傾向が強いのも自覚しています。
しかし奨学金のおかげで救われたのも事実です。だから奨学金を悪という人には、やはり次のような疑問が湧いてきます。