<疑問その4. 奨学金の返済を加味した家計設計を考えなかったのか?>
たとえば東京での大卒初任給は、手取りで16万~18万円くらいだと思いますが、スマホに月1万円以上、家賃が7万~8万円もする部屋に住んでいる人がいます。
そこに奨学金の返済が加われば、それはさすがに苦しい。だから本来は、収入に合わせて郊外のアパートに引っ越すなどして家計や生活構造を変えるはず。なのに家計の収支すら見直せないとしたら、いったい大学で何を学んだのか。
いくら勉強ができても生活の知恵が回らないとしたら、なかなか大変だろうと思います。
いまなら格安SIMで月2,000円程度でしょう。さらに東京でも、家賃3万円程度のアパートはたくさんあります。
<疑問その5. 苦しいなら返済猶予制度を使わないのか?>
前述の通り奨学金には返済猶予制度がありますから、事情を説明すれば返済開始時期を遅らせてもらうことができます。私もそうしました。
もし家計が苦しいなら、その制度を利用すればいい。誰だって経済的に苦しくなる可能性はあるから、返済できなくなることもある。それ自体が責められるわけではありません。
なのに、学生支援機構にまったく相談もしないで、勝手にしれっと滞納してしまう人がいます。電話の1本ぐらい入れればいいのに、なぜ何も言わずに滞納してしまうのでしょうか。
これは住宅ローンの返済に行き詰まり、家を差し押さえられる人に似ています。
金融機関に相談もせずずっと滞納し、督促が来ても無視。そしてある日突然、「いついつまでに残債全額を返済せよ」などという最後通告が来る。
そこから慌てて銀行に連絡を入れ、じゃあ任意売却しようということになる。競売にかけられるより市場価格に近い金額で売れる可能性があるとはいえ、期限が決まっているからどうしても安くなる。売っても残債が残り、それを細々と返済し続ける。
これも、苦しくなったらすぐに金融機関に相談すれば、リスケ(リスケジュール:たとえば当面は利息部分の返済だけでよいなど)に応じてくれることもあるはずなのに。
いまは返済が苦しくても、あとで元を取れれば良い
奨学金の返済は、次の世代にバトンを渡すことだ、というのが私の考えです。先輩が返済した奨学金が、自分が進学する際の原資になっている。同時に自分が返済する奨学金が、次の世代が進学するための原資になる。
しかしもしいま自分が苦しいからと、そのバトンを落としてしまったら?自分は先輩方のお金を使って進学していながら、世代間扶助のサイクルを自ら断ち切り、後輩が学ぶ機会を奪ってしまうかもしれないということに、想像力を働かたいと思います。
という感じでちょっと辛辣な書き方になってしまいましたが、だからといって奨学金の返済が苦しいからと、若干20代で人生に絶望する必要はありません。仮にいま25歳だとして、職業人生はあと40年もあり、いくらでも逆転できるからです。
20代はまだ周囲から教えてもらっている状態ですから、収入が低く生活が苦しくて当たり前。でもそれを乗り越え、30代、40代になり、仕事の実力がついてくれば、いくらでも挽回できます(と、私は希望を持つことを推奨しています)。
振り返ると、人生は後半戦を尻上がりで迎えられる方が幸福度が高いと感じます。なので、いまの状態で悲観するのではなく、人生の時間軸を長く見据えてじっくり実力をつけていけばいいと思います。