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全国で「敬老パス」廃止・見直しの動き、自動車事故と“寝たきり”が増える?現役世代が高齢世代をいよいよ支え切れなくなっているとの見方も

高齢者がバスや電車に割安で乗れる「敬老パス」が、全20政令指定都市と東京都のうち約6割で制度見直し、あるいは廃止されているとの報道が、大きな反響を呼んでいるようだ。

記事によると千葉・静岡・浜松・広島の4市では、2007年以降に敬老パスの制度を廃止しているとのこと。さらに利用上限額を設定するなど制度を見直し済みなのが5市で、また3市が見直しを検討しているとのこと。

65歳以上の人口は1975年に約887万人だったが、2020年には約3,603万人に増加している。廃止や見直しの実施した自治体は、敬老パスの利用者増に伴う財政負担を、廃止・見直しの理由としているという。

敬老パス廃止で逆に医療費が増大する懸念も

1970年以降に各地で導入され始めたという敬老パスやシルバーパスの類。当初は、高齢者に外出をより促し健康増進を図ってもらうといった狙いもあったといい、対象年齢は各自治体によってまちまちだが、65歳以上か70歳以上というケースが多いようだ。

ただ先述の通り、当制度が各地でスタートした当時と比較して、高齢者の数はそれこそ4倍以上に増え、さらに健康寿命も延びたことで各人の利用頻度も増えている状況とあり、割引分を補填する各自治体にとっては、その負担はかなりのものとなっていた模様。

そのため、制度自体をあっさりと廃止にしてしまうところも出てきているいっぽうで、今年10月から敬老パスを従来の紙製からICカードに切り替え、利用実態を正確に把握する取り組みを始めようとしている横浜市のように、制度維持のための見直しを検討している自治体も増えているというのだ。

いっぽうで利用実態といえば、1枚のパスを複数人で使いまわすいった“不正利用”も横行しているのではといったも。実際、名古屋市では1枚のパスが年間数千回利用されるというケースもあったため、今年から原則1年の有効期間内に利用できる回数が730回までに制限されたようだ。

このように各自治体でその在り方が大いに議論されている敬老パスだが、廃止する動きに対しては“高齢者の免許返納の機運に水を差す”“高齢者が外出を控えることで健康が損なわれ、逆に医療費が増大する”といったデメリットがあると、反対する意見も多数ある状況。

ただ、この制度が始まった約50年前と比べても、高齢化が著しく進行するなど社会の状況がすっかり変わっているとあって、対象年齢の大幅引き上げなどの見直し、さらには廃止もやむなしという声もあるなど、様々な意見が飛び交っている。

現役世代が高齢者を支え切れない時代に

いっぽう、今回報じられたような敬老パスの維持が困難になりつつあるという状況に対しては、いよいよ現役世代が高齢世代を支え切れなくなって来ている……といった受け止めもされているようだ。

進行する少子高齢化によって現役世代への負担はどんどんと増え、年金制度も今の高齢者に使い尽くされ、将来的には破綻するのではといった見方も依然として根強い昨今。

そんな現役世代も決して豊かではなく、つい先日もコロナ禍で減収した世帯が利用できる特例貸し付け金に関して、返済が難しく自己破産や債務整理の手続きをした利用者が現時点で少なくとも約5,000人存在し、今後さらに増える可能性もあると報じられたばかり。

多数の高齢者を少数の現役世代が支えるという、ただでさえ無理のあるような図式に危うさを感じている向きにとって、今回報じられた敬老パスの維持が難しくなっている現状が、まさに今後危惧する出来事の“序章”のように見えるのも仕方のないところだろう。

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