米国は「金融の核兵器」とも言われるSWIFTからロシアを締め出すなど、経済制裁を続けています。しかし、ロシアルーブルは上昇し、貿易黒字も増えるなど、経済制裁は全く効果を発揮していません。英米、日本メディアでは報じられない米国覇権の衰退について解説します。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)
※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2022年5月29日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
ロシア国債がデフォルトして困るのは欧米
米国は、ロシアの外貨準備(6,500億ドル:82兆円)のうち、約50%のドルとユーロをFRBが凍結し、併せてSWIFTの国際送金網をルーブルでは使えないようにして、制裁しました。
CIAが核兵器快活疑惑をでっちあげたイランに対して行った禁輸制裁と同じものであり、これは米国が使うことのできる「金融の核兵器」とされていたのです。
確かに、直後にルーブルは50%低下しました。ドル・ユーロ建てのロシア国債は、デフォルトの危機を続けています。
しかし、ロシアの国債(=米国と西欧の債権)のデフォルトは、奇妙な制裁です。ロシア国債が対外的にデフォルトをして、損をするのは、ロシアの国債をもつ米国と西欧の銀行です。
借り手のロシアは、国債での借金が帳消しになり、利益を得るからです。これをあたかもロシアの損のように、メディアは報じています。奇妙な報道です。
SWIFT排除前より高くなったルーブル
ロシアの損は、ルーブルを西欧と米国に対しては使えなくなったことだけです。国債をデフォルト(支払いの停止)するのは、ロシアがもつ外貨準備のドルとユーロ(ロシアの資産)を、米銀と西欧の銀行から引き出せなくなっているからです(没収はできない。預金の凍結です)。制裁解除の期限まで引き出せない定期預金になっています。ロシアが外貨で困っているからではないのです。
ルーブルの、SWIFT回線からの排除の直後には、ルーブルは0.8円へと、1.6円から50%急落しました。ところが、その後4月からは1.6円を越えて、現在は2.2円台に上がり、SWIFTからの排除前の1.6円より37%も上がっています。