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経済制裁を食らって笑うロシア。欧米メディアが報じない、“金融の核兵器”SWIFT排除で米国が自爆する理由=吉田繁治

なぜルーブルは高くなったのか?

一体、何が起こったのか。米国がロシアのエネルギーの輸入禁止を敷いたあとも、ドイツ・中国・オランダ・イタリア・ポーランドは、ロシアからの原油輸入を続けています。ドイツは、天然ガスの輸入も続けています。

エネルギーで自立ができる米国には、ロシア産エネルギーの禁輸が可能でも、欧州諸国にとっては、エネルギー輸入は止めることができない。輸入を停止すれば備蓄が切れる約3か月後には、国内の電気とガスが止まるからです。日本もロシア産原油とLNGの輸入は続けています。中東の産油国は、米国からの増産要請には、応じていません。

中東諸国には、米国に、約50年、裏切られ続けてきたという思いがあるからです。メディアの報道も英米とは角度が違います。英米は欧州大陸では少数派です。戦争の背景には、1990年代までは圧倒的だった、英米覇権の後退があります。

ロシアからのエネルギー輸出は、3月、4月、5月の3か月で8兆円分、続いています(年間では32兆円)。その分、ドルが入らなくなった分、ユーロがロシアの銀行に流入しているのです。

これが、戦争前よりルーブルが37%上がった理由です。つまりロシアに対して、SWIFからのルーブル排除と輸入禁止は全く効いていない。資源産出国の通貨は、どんなにドルからの制裁があっても強い。資源輸入国にとっては必需なエネルギーや穀物は、ロシアが指定した通貨で買わねばならないからです。ロシア制裁の旗印が強いのは英米です。米国を下に見ることもあるドイツとフランスは、伝統的に、ロシアとは近い。

ロシアの貿易黒字は昨年より増えている

ロシアにとっては、原油価格が昨年の65ドルから1.8倍に上がり(1バーレル110ドル台)、
欧州向けLNG(スポット)は8倍に上がって(100万BTU:40ドル)、貿易黒字は、戦争前より逆に増えたのです。

ロシアからのエネルギー輸出は、止まっていません。困っているのは米国から航空機や列車用の半導体が輸入できなくなったことですが、禁輸がない中国からの代替品を使っているようです。

世界の半導体生産では、1位韓国サムスン、2位台湾TSMG,3位米国Micron、4位韓国SK Hynix、5位が日本のKioxia/WDです。中国(ICウエハで年産350万枚)は、2021年に日本を越えました。

米国は、ロシアの制裁とは言いながら、利敵行為をしています。なぜ、結果がわかりきった金融制裁、経済制裁をしたのか。米ドルの世界に対する覇権力の劣化を、認識していないからでしょう。

世界のBRICSと産油国を先頭に、南アとアフリカを含み、GDPの50%の国(人口では80%)がロシア側についていて、ドル体制は78年目に、ロシアと中国が主導する、金・コモディティ価格へのリンク通貨の登場によって、終焉を迎えようとしています。

Next: ルーブルの回復についてシャットアウトしている英米と日本のメディア

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