経済悪化が顕著になれば利下げもありえる
先のニュースに対し、利上げに限界があると感じている投資家もいるようです。それは、下記の著名投資家のツイートが発端になりました。
6月27日の米金融市場では、小売セクターで発生している過剰在庫の問題がFRBの利上げや量的引き締めの転換につながる可能性がある、との内容でした。
それを裏付けるように、先の議会証言でパウエル議長は、利上げなどを進める過程で米景気はリセッションに陥る可能性があると述べています。
28日に発表された6月の米消費者信頼感指数の急低下は、実際に景気後退を招くことに警戒感を与えるには十分な結果でした。
経済が悪化しているデータが揃えば、利下げへと急遽、転換することもありえます。過去に引き締めから緩和に転じた期間はどれくらいだったのか振り返ってみると、インターネットバブル崩壊は、約7カ月半で緊急利下げを決定しています。
また、住宅バブルが崩壊した際には、約13カ月半という期間で利下げに転じました。他にも、1994年2月から95年2月まで続いた利上げ局面では、約5カ月と短いものもあります。
これらの事例を平均すると、最後の利上げから最初の利下げまでは、およそ8カ月半と、1年未満程度で利下げに転じたというデータがあります。
今回の利上げ局面では、今年3月17日に0.25%ポイントの利上げを行った後、5月5日には0.5%ポイント幅で追加利上げが行われました。
従いまして、今後景気後退を示唆する統計やインフレの低下などが見えてくれば、FRBの利上げは早ければ年内、遅くとも23年前半には停止するかもしれません。そして、過去のデータを考慮すれば23年後半にはFRBは再び金融緩和政策に舵を切る可能性があります。
半導体不足解消への第一歩
ロイターによると、自動車からスマートフォンに至るまで、あらゆるメーカーを悩ませている根強い半導体不足が緩み始めているとのことです。その理由として、ブルウィップ効果(むち効果)を挙げています。
これは、需給バランスにおける供給過剰が、消費に近いところから遡って、製造元にいくにつれ大きくなる現象のことを言います。
例えば、メーカーは在庫切れで顧客を失望させたくないので、製造に必要な半導体を追加で発注するとします。注文を受けた半導体製造会社も同様の理由で製造のために必要な商品の追加注文を出します。
その過程で、もしメーカーが供給過剰に気づいて注文をキャンセルすれば、先のブルウィップ効果が発動し、需要減の動きが製造元に行くほど増幅し、その動きはコロナ禍のように供給不足が生じたときと同様に速いはずです。
この動きは今に始まったことではなく、半導体業界には過去何十年もサイクルのように訪れています。歴史は再び繰り返され、半導体不足は近く供給過剰に転換するかもしれませんが、高インフレに苦しむ現在の相場では、喜ばしい一面もあります。