損益計算書では見えづらい業績、実態は?
期間損益以外に、SBG重要視していると公表している指標にNAV(Net Asset Value)とLTV(Loan to Value)がある。
NAVは時価純資産のことであり、ドルベースで見ると2022年3月末が$151bn、2022年6月末が$135bnと3か月で$16bn減少しているが、日本円ベースで見ると円安の影響で、2022年6月末の数字は2022年3月末から変わらず18.5兆円となっている。
NAVは、企業の時価ベースの資産価値を表すものであるので、為替の影響ではあるものの、SBGがこの3ヵ月間で円ベースでは時価純資産価値は減らしていないということになる。
為替について、4~6月期はドル/円相場が大きく円安方向に動いたのだが、SBGにはプラスの影響とマイナスの影響を及ぼしている。
プラス面は、SBGは日本の企業であるため、最終的には日本円で会計を行うわけだが、円安の影響でドルベースではNAVが大きく減少しているのに、円ベースでは横ばいとなった点である。
一方、マイナス面として、ドル建てで借り入れている債務について、円安で▲8,200億円の為替差損が発生している。(国内会社の外貨建ての純負債が円ベースで増加したため)
次にLTVだが、本指標は財務リスクを表す数値で、数値が低いほど財務リスクが低いということになる。(低すぎると財務レバレッジを使った経営が出来ておらず、経営効率が悪いということにもなるが)
SBGではLTVは純負債/保有株式という定義としているが、6月末のLTVは14.5%であり、3月末の20.4%から大きく改善した。
SBGではLTV25%を上限の基準としていて、緊急時でもLTV25%を超えないような運用を行っているということだが、6月末の水準は比較的余裕がある水準と言える。
アリババ株の価値減少
もう少し長めの期間での保有株式の価値の推移を見てみると、2021年6月末(今から1年前)の保有株式の価値の合計が32.1兆円だったのが、2022年6月末では21.7兆円と保有株式の価値が約10兆円減少している。
内訳をみると、約8兆円がアリババ株の売却や下落による減少である。
SBGは、これまで保有するアリババ株を利用した資金調達を行ってきた。
8月4日にはフィナンシャル・タイムズ(FT)で、SBGがアリババ株の先渡売買契約で約3兆円の資金調達を行うという報道があった。
先渡売買契約とは、将来のある時点で、あらかじめ決めた価格や評価日の価格で株を売買する契約である。
先渡売買契約は、長い期間を使って株式市場に大きな影響を与えることなく株式を売買する手法であり、要するにSBGはアリババ株を売却しているということである。
FTの報道によると、SBGは今年に入ってから先渡売買契約を通じて、保有するアリババ株の約3分の1の売却を実施したとのことであり、また持ち分を取締役会のポスト維持に必要な水準まで売却して、自社の財務諸表にアリババの利益を計上できないようにする可能性もあると報道されている。
ご存じの通りアリババは中国政府のビックテック規制によって、かなり厳しい状況に陥っており、一時300ドル以上していた株価も90ドル近辺まで下落している。