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円安に対抗するならスイスフランがベスト。直前に迫った米国ドルの基軸通貨からの陥落=吉田繁治

1ドル140円台が定着してきましたが、これはエネルギー資源の高騰と、日本の貿易赤字が主因です。日米金利差は二次的要素でしかありません。米国ドルに対する世界の信用は落ちており、安定した通貨を求めるならスイスフランがベストです。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2022年9月14日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

2022年のエネルギー・資源価格高騰

ウクライナ戦争にともなって、輸入資源が高騰した2022年には上期(6か月)の貿易収支は、7.9兆円という日本史上最大の赤字でした。

2022年の通期では、15兆円規模の貿易赤字でしょう。15兆円の貿易赤字は、「実需のドル買い15兆円/円売り15兆円」を示します。資源輸入の代金は、ドル建てで払うからです。「銀行でのドル買い/円売り→SWIFT(国際送金回線)での送金」になります。
※参考:上半期貿易赤字、過去最大 原油高・円安で7兆9,241億円―22年上半期 – JIJI.COM

エネルギーと資源価格の高騰による貿易赤字15兆円(=輸入物価+50%)が、「1ドル140円台」という、40年ぶりの円安の主因です。日米の金利差は二次的な要素です。

日本がほぼ100%を輸入するエネルギー・資源価格の高騰が収まっていけば、貿易赤字のための「ドル買い/円売り」は減って、「1ドル=120円台」には戻っていくでしょう。時期はいつか?

まだ、見通せない。2023年中にあるとすれば、2023年の9月以降でしょうか。西側世界が5%を超えるインフレ率の間、円が戻ることはないでしょう。

現在のドル高の性格

現在の円安・ドル高は「米国経済を背景にするドルが強い」ためのものではない。米国の8%台のインフレは、コロナ以降、4兆ドル(568兆円)増刷された米ドルの、価値下落を示すものです。

ドルの1単位の価値は、8%台のインフレによって下がっています。これが、逆のドル高になっているのは、ドル価値低下を補う「FRBの利上げ」が、世界からのドル買いを増やしているからです(海外通貨との金利差=イールドの増加)。

ドル安への転換が起こる原因は、米国の不良債権

しかし今度は、副作用として、

1)米国の利上げが負債(政府、企業、世帯)の不良債権化をも招くようになると、
2)FRBの利上げが逆に「ドル安」の要因になって行きます。

米国の負債は、コロナ危機の後、GDPの300%に増えています。リーマン危機のときの不良債権比率は、総負債の16%でした。これが金融危機です。

コロナ危機の2020年の、不良債権比率は6%に高まりました。ただし、FRBのドル増刷(4兆ドル)によって、米国のB/Sでの不良債権比率は、現在、4%台に下がっています。

株価・住宅価格下落と、不良債権の関係

1)年初来、約20%下がっている米国株があと25%くらい下がって住宅価格も下がると、
2)リーマン危機並みの、16%の不良債権(デフォルト債券)になり、米国の金融危機になっていきます。

(重要な注)次回の米国不良債権の増加には、米ドルの基軸通貨としてのポジションの低下が伴います。

そのときは、リーマン危機並みのドル安/円高(34%の円高)に戻る可能性が高くなるでしょう(2008年:1ドル≒106円……2012年は1ドル≒80円)。

為替を決める要因は多要素です。どの指標が通貨投資家に重視されるかによって、レートが短期に変動します。現在は、日本の貿易赤字と日米の金利差です。

一方で、長期的な通貨レ-トは、各国の経常収支と、マネタリーベースの比較で決まって行きます。中央銀行によって増発される度合(ソロスチャート)の大きな通貨が、下がるのです。

なおドルの実効レートが高い間は「ドルの反通貨である金価格」は弱含みになります。金が高騰するのは、米ドルが下落したときです。

これから数年のスパンでいえば、経常収支が構造的な赤字を拡大しているドルは、急落するでしょう(2022年は、歴史上最大の、8,778億ドル(124兆円)の赤字です)。米ドルの暴落は、インフレが収まり、ドル金利が下がる2024年に迫っているかもしれない。

米国の経常収支の赤字は、対外的なドルの増発(銀行の信用創造)でファイナンスするしかないからです。
※参考:アメリカの経常収支の推移 – 世界の経済ネタ帳

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