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ウクライナの快進撃は続くか?報道されない本当の戦果と損失。ハルキウ奪還が敗退を早める“バルジの戦い”となる可能性=高島康司

ウクライナ軍は快進撃を続けられるのか?

今回ウクライナ軍のハリキウ州奪還は誰も予想していなかった快進撃だ。

ウクライナ軍はわずか数日のうちに、4,000平方キロという東京都の約2倍の領土の奪還に成功した。これは間違いなくウクライナ軍の大成果である。ウクライナが高揚するのもよく分かる。また、これからロシア軍の敗走が始まるとする西側メディアの楽観的な見方も、分からないではない。むしろ当然かもしれない。

しかしながら、アレキサンダー・モーリコスや他の軍事アナリストなどは、冷静に見るとウクライナ軍の快進撃とロシア軍の敗走がこれからも続き、ウクライナが領土の大半を奪還できるかどうかは、疑問だとしている。

ウクライナ軍は米グリーンベレーが訓練した3万人のエリート部隊を動員し、そのうち2割に当たる約6,000名の死傷者が出ている。ウクライナからの情報によると、ハリキウ州奪還作戦を行う前、大統領の顧問はこのエリート部隊を失うことを恐れ、最後の決戦まで温存すべきだと主張したようだ。だがゼレンスキー大統領はこの意見に反対し、最精鋭部隊の前線投入を決めた。

このように見ると、ウクライナは切り札となるエリート部隊の約2割を失ってしまったことになる。この状況で、ロシアが併合を主張しているルガンスク、ドネツク、サボリージャ、ヘルソンの4州、さらにロシアが2014年に併合したクリミアの奪還に成功するのだろうかという疑問が出てくる。

ロシアの目的はこの4州の併合なので、ハリキウ州はロシアの目的には入っていない。早期に退却したのは、それも理由にあると見られている。だが、ロシアの主目的の4州の奪還となると、ロシアは激しく反撃することだろう。

今回のような快進撃をウクライナ軍は他の地域で続けられるのだろうか?

また、欧米の武器支援の問題もある。以前の記事でも書いたように、アメリカを始めとしたNATO諸国の武器支援はそろそろ限界に達しつつある。「ハイマース」などのハイテク兵器の在庫が切れ始めているのだ。また、世界的な半導体不足がいまだに続いているので兵器を増産することも難しくなっている。

さらに、ウクライナ経済の問題もある。この戦争でウクライナのGDPは−45%から−50%まで下落する見込みだ。財政は逼迫しており、NATO諸国の支援があっても戦費調達には間に合わない状況だ。一方ウクライナ政府は、来年度は50億ドルの債務を30億ドルまで圧縮するとしている。

こうした状況で、戦費調達ができるのかどうかも問題だ。

Next: ミッドウェーではなくウクライナのバルジの戦い

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