2023年のブラック・スワンの1つと見られていた中国の状況が少し変わってきました。ゼロコロナ政策から方針転換して一気に「フル・コロナ」に変貌、この春節には6億人が旅行し、延べ21億人が移動するといいます。これにあわせて経済活動が一気に活発化しました。この中国のコロナ環境変化を受けて、国際機関の世界経済見通しも影響を受けています。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2023年1月27日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
フル・コロナで民族大移動
2023年のブラック・スワンの1つとして紹介した中国の状況が少し変わってきました。昨年12月に国民の強い反発を受けて「ゼロコロナ」を撤回し、原則規制撤廃となったことから、感染急拡大の混乱と、北京政府の指導力低下を大きなマイナス要因と見ました。しかし、規制撤廃からわずか1か月余りの間に、中国はゼロコロナから一気に「フル・コロナ」に変貌しました。
専門家によると全国民14億人の約8割、11億人がすでに感染したと言います。そして「感染済み」がかつての「陰性証明」なみの「免罪符」になり、飲食店や公共施設にも抵抗なく利用できるようになりました。
この春節には6億人が旅行し、延べ21億人が移動するといいます。これにあわせて経済活動が一気に活発化しました。
不安爆発は回避
この感染急拡大に政府、医療機関が対応できるのか、その不安が都市部で爆発するのでは、との懸念はここまで回避されています。医療機関は満杯で、火葬場には長蛇の列ができていると報じられていますが、当局が正確な感染者数、死者数を報じないので、国民の間にその実態が伝わりません。
政府の公式発表ではコロナによる死者は7万人余りとなっていますが、実態はその10倍以上と見られています。
それでも国民の間には当初こそ外出自粛が見られましたが、すぐに活発な活動が戻りました。感染して命を落とす危険より、行動の自由が戻ったことに喜びを感じ、政府批判は高まっていません。
もっとも政府は信用できないとして情報はSNSから取得し、自ら薬を買って感染を乗り切るやり方が普及しています。解熱剤や風邪薬が売り切れ、手に入らないと家畜向けの薬にたより、肝臓を壊して亡くなるケースもあると言います。
これまで深刻な病と言って警告してきたのが、ゼロコロナになって突然何でもないかのように、手のひらを反すような当局者の発言を、国民は信用しません。
中国で手に入らない薬を、日本で爆買いしてゆくケースも報じられ、日本の薬剤店でも風邪薬が品薄になっていると言います。いずれにしても都市部での感染爆発で機能不全になったり反政府活動が高まる事態は回避されました。