国際機関の見通しに変化
この中国のコロナ環境変化を受けて、国際機関の世界経済見通しも影響を受けています。
中国のゼロコロナ解除前に予測した世銀の世界経済見通しは、23年の世界成長率を1.7%に引き下げました。欧米の金融引き締め効果を考慮して米国、ユーロ圏ともに1.9%ポイントも下方修正し、それぞれ0.5%、0.0%としたのに加え、中国経済の停滞を重く見てこれを0.9%ポイント下方修正して4.3%成長としました。
そしてIMF(国際通貨基金)も年初には23年の世界経済は深刻だと言い、当初の2.7%予想から下方修正を示唆していました。中国の予想外の不振も影響していました。
ところが、IMFのゲオルギエバ専務理事は1月20日にスイスのダボス会議で、世界経済は数か月前にみていたほど悪くないと言い、中国経済は昨年の3.0%成長に対し今年は4.4%が可能で、中国を中心に予想を上方修正する可能性を示唆しました。中国についてはゼロコロナの撤廃以降、感染急拡大のマイナスよりも、感染終了後の景気急回復をより重く見ています。
国連の世界経済見通しも、22年の3%から23年は1.9%に低下を予想していますが、米国が昨年の1.8%から今年は0.4%に、EUが昨年の3.3%から今年は0.2%に低下するためで、中国は昨年の3.0%から4.8%に高まる予想となっています。欧米の民間予測機関も中国のフル・コロナを見て見通しを上方修正するところが増えています。
中国発、2つのインフレ圧力
中国経済の想定が変わることで、需要見通しが変わり、原油など資源価格を中心に、これまで想定していたよりも世界のインフレ圧力が高くなると見られています。原油先物は一時70ドルあたりまで下げましたが、最近ではWTIでも80ドル強に反発しています。金やその他資源価格も上昇気味です。
中国の需要回復は主に個人の移動が自由になることで、個人消費の回復、春節休暇での海外旅行の急増などに現れています。14億人の中国需要が増えれば、中国向け輸出の回復を通じて世界の景気回復にも期待が集まります。
欧米の景気後退リスクがこのところやや緩和されていますが、中国の「フル・コロナ」も少なからず影響しています。これは欧米のインフレ高止まりにもつながります。
それでも中国の供給網が直ちに回復するわけではありません。サプライチェーンが混乱したまま需要が回復すれば、その面からもボトルネック・インフレの要因になります。
その分、中国の回復も制約され、成長を阻害しますが、需給についてはタイトにする分、インフレ圧力を高めることになります。