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中国は新年のブラックスワンになるか?春節で集団免疫を獲得すれば「リバウンド景気」も=斎藤満

IMF(国際通貨基金)のゲオルギエワ専務理事はこの元旦にCBSのニュース番組で2023年の世界経済は多くの地域で厳しいものとなり、世界成長見通しを、これまでの2.7%予想からさらに引き下げる可能性を示唆しました。昨年の大変革に続いて今年も大きな変革が予想されます。その1つに中国の政治経済の不透明さがあります。コロナ危機、住宅バブル、台湾侵攻・米中戦争の可能性を探ってみます。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2023年1月6日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

コロナ感染急拡大も習近平は「勝利宣言」

中国の習近平国家主席は昨年末、新年に向けての演説を行いました。そこで習主席は「この上なく苦しい努力を経て、我々は前代未聞の困難と挑戦に勝利した」と、新型コロナとの戦いにおいて、事実上の勝利宣言をしました。

中国指導部は昨年12月になってゼロコロナ政策を転換し、諸規制を緩和しました。国民の不満にこたえ、経済の再開を期待しました。

しかしそのとたんに中国全土で感染爆発が起きました。当局が正式な数値を発表しなくなりましたが、部分的な報告や、医療機関、火葬場の動きから感染爆発の可能性が示唆されています。規制緩和から数週間で2億4,000万人も感染したとの試算もあります。

この感染爆発は短期的には生産活動のストップなど、落ち込んだ中国経済に一段の制約となります。

中国国家統計局発表の12月のPMI(購買担当者景気指数)は製造業で47.0、サービス業では41.6と、経済の拡大・縮小の分岐点50を大きく下回っただけでなく、コロナ危機の20年2月以来の低水準となりました。

中国進出の米アップル社やテスラ社はコロナの感染拡大で生産を停止したと言います。前述のPMIからみて12月、1月の経済指標は、この影響で大きく落ち込む可能性があり、GDPも10-12月分と今年1-3月が急減する可能性があります。

サプライチェーンがさらに混乱し、中国からの部品供給に依存したり、製造過程を中国に依存する周辺国も打撃を受けます。

同時に、数値は公表しなくても、短期間に億人単位の感染者が出ると、多くの人が医療サービスを受けられずに命を落とす可能性があり、政府への不満が高まるリスクがあります。日本人の感染、死亡も複数報じられています。

地方政府や医療部門の責任にすり替えても国民は納得しません。勝利宣言とは裏腹に、習近平指導部の責任が問われ、政府の信頼が揺らぐ懸念があります。ひいては中国社会全体が動揺するリスクもあります。

1月下旬の「春節」で集団免疫を獲得できる?

その一方で1月下旬の「春節」を機に、感染が一気に広がり、14億国民の過半が感染して、結果的に早い時期に「集団抗体」を獲得する可能性があります。

集団抗体を獲得してしまえば、次の変異株が猛威を振るうまでは、中国では消費の拡大、生産増が期待され、短期的にはコロナ禍後のリバウンド景気が出現します。

これは世界経済には支援材料となりますが、一方で原油など資源価格は巨大需要地の回復で価格が上昇し、世界経済にはインフレ圧力が残る要因になります。

Next: 中国が世界経済のブラックスワンに。住宅バブルと米中戦争の行方は?

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