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中国は新年のブラックスワンになるか?春節で集団免疫を獲得すれば「リバウンド景気」も=斎藤満

厄介な住宅バブルの扱い

年末の12月30日、中国不動産開発大手、中国恒大集団のEV子会社は、コスト削減のために従業員カット、給与水準引き下げを決めました。不動産部門の苦境が原因です。

政府の支援もあって中国住宅市場はなんとか持っていますが、新築住宅価格はこのところ限界的に下げが続いています。政府支援がなければ、とうに破綻している業者が多く、構造的に供給超過で需給が悪化し、デフォルトの発生、不良債権が増加しています。

物件引き渡しができずに払い込んだ資金の返還を求める客や、住宅ローンの返済を巡る顧客と銀行とのトラブルも多発しています。

このまま住宅価格の下げが続くと、住宅を売却して手放してもローンを返せない「デッド・オーバーハング」の状態となり、金融危機に発展しかねません。

これを金融危機に至らないよう、金融緩和で側面支援していますが、欧米で急速に金融引き締めをしているため、中国が金融緩和を続けると、中国から資金が海外に流出し、人民元の下落とともに、金融が意図しない引き締まりを起こします。

かといって欧米に合わせて金融引き締めをすれば、中国の住宅市場が持ちません。

今年は当局のかじ取りが大変難しい年になります。

米中は戦争しない

トランプ前大統領の米中貿易戦争以来、米中の対立構図が浮き彫りされ、特に習近平政権が台湾併合に強い意欲を見せているだけに、台湾侵攻リスクが意識されています。

その場合、米中間の緊張が一段と高まり、中国への経済制裁発動や、日本の自衛隊の発動なども取りざたされています。

しかし、この100年余りの歴史を見ると、日米以上に米中は近しい関係にあり、そう簡単には戦争できない環境にあります。

日本金融財政研究所の菊池所長が指摘するように、義和団の乱で欧米列強が勝利した後の米中関係は、見た目以上に近く、この間米国は文化的に多くの対中国支援を続けています。

その一環が、義和団の乱の賠償金4億5,000万両の使い方です。米国もこの賠償金を受け取りましたが、1908年にその一部を減額し、その分を中国人の米国への留学支援に使うことにしました。その一環で現在の精華大学が設立され、今も米国がこれに援助をしています。

習近平国家主席はこの精華大学を卒業しています。米国の支援で中国のトップに立てたともいえます。

市場には今年にも中国が台湾を侵攻するのでは、との懸念が高まっていますが、その可能性は現時点では極めて低いと見られます。中国は今の戦力では台湾、米国と対峙する力はないと自覚しています。

軍事力で張り合うには、まだまだ経済力をつけ、軍事費を拡大し、実践訓練を積む必要があります。まだ何年もかかるはずです。

Next: 習近平が台湾侵攻に踏み切れない事情/中国のリベンジ消費に期待?

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