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加速する脱ドル化、次の基軸通貨は本当に人民元なのか?習近平の野望を砕く新勢力の存在=高島康司

基軸通貨の座を狙う「人民元」

習近平は、最近アラブ諸国でのサミットで行った演説で次のように述べた。

石油の価格を人民元建てで設定する。<中略>

今後3年から5年の間に、中国は「GCC(湾岸協力会議)」諸国と、次のような優先分野で協力する用意があります。

第一に、中国が「GCC諸国」から長期的に大量の原油を輸入し続け、LNGをより多く購入するという、多次元的なエネルギー協力の新しいパラダイムを作り出す。

また、商業分野、エンジニアリングサービス、貯蔵・輸送・精製などの分野での協力も強化する予定です。

「上海石油ガス取引所」のプラットフォームを石油・ガス取引における人民元決済にフル活用し、為替協力と 各国の中央銀行が「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」を交換する「m-CBDCブリッジププロジェクト」を立ち上げる予定です。

これは、石油やガスの価格がドル建てだけでなく人民元建てになることを意味している。すでにロシアとのエネルギーの取引では人民元が決済通貨として使われているが、今後3年から5年で、中東の「GCC諸国」とのエネルギーを含めたすべての取引を人民元建てにするということだ。

エネルギーはどの国にとっても死活的に必要な物資だ。各国は「GCC諸国」からエネルギーを輸入している。したがって、「GCC諸国」との間に人民元建て決済が定着すると、中国主導の「一帯一路」地域とともに、BRICS+諸国全体で人民元は基軸通貨として受け入れられる可能性は大きくなる。

また、「m-CBDCブリッジプロジェクト」は、中国が中心となって、各国の中央銀行が発行するデジタル通貨のリアルタイム、ピアツーピア、クロスボーダーの外国為替取引を可能にするシステムだ。すでに、中国、タイ、香港、アラブ首長国連邦の中央銀行によって計画が進められている。

これが導入されると、国際決済通貨としてのドルの基盤である送金システムの「SWIFT」を使う必要性はなくなる。このシステムを使うと、中国は「デジタル人民元」ですべての決済を行うことが可能になる。

世界の石油埋蔵量の80%が人民元で決裁される?

中国はまた、湾岸諸国にとってより魅力的なものにするために、中国が人民元建てで融資を行い、各国が必要なものを購入する方法を促進する「通貨交換協力」を開始した。この方式が定着すると、世界の他の地域にもスタンダードなモデルとして拡大するだろう。

中国はまた、イランとの「包括的戦略パートナーシップ」に署名した。25年間の取引で、中国はイランの石油を大幅に値引きして安定供給する見返りに、イランに4,000億ドルを投資すると約束した。

これは、イランがエネルギー輸出を6ヶ月間の平均価格に対して最低でも12%のディスカウントで販売する代わりに、中国はイランの石油化学下流部門(精製・プラスチック)の開発に2,800億ドル、イランの輸送・製造インフラに1,200億ドルを提供する構想だ。

このようにして、中国はイランとの関係を深化させながら、最終的にイランを人民元決裁圏に引き込む計画だと見られている。そしてこれは、イランとともにロシアやベネズエラにも拡大し、中国が石油を人民元で買い取り、その見返りに中国が革新的な投資を行う計画だ。

ロシア、イラン、ベネズエラは世界の石油確認埋蔵量の約40%を占めている。さらに、湾岸諸国は石油の確認埋蔵量の40%を占める。これらの地域が人民元決裁圏になると、世界の石油埋蔵量の80%が人民元で決裁されることになる。

Next: 「人民元が新しい基軸通貨になる」とは言いきれない第三勢力の存在

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