福井県池田町の広報誌に掲載された、移住者に向けた提言「池田暮らしの七か条」の内容や表現が酷すぎると、批判の声があがっている。
問題視されているのは、「都会風を吹かさないよう」「品定めされることは自然」などといった文言。報道によれば、この“七か条”は住民からの「移住者が共同作業に賛同しない」などといった相談を受け、池田町にある33地区の区長会が作ったものだという。
池田町の総務財政課長は「町暮らしの心得を理解してもらうという意図が伝わるようにすべきだった」と話したとのことだが、問題となっている文面などは「区長会が決めたものなので」と変える気はないと話しているようだ。
町側は「文面を変えることはない」と表明
かねてからの「田舎暮らしブーム」にくわえて、コロナ禍でリモートワークが普及したことも後押しし、地方移住を検討する人が増えているという昨今。
いっぽうで、実際に地方移住をしたか検討したことがあるという方を対象に、とある移住支援メディアが調査したところによると、移住の際に障壁になる(なった)ものは何かという質問に、最も多く声があがったのは「人間関係への不安」だったという。
田舎といえば、何かと閉鎖的でよそ者にいい顔をしない、さらに保守的な空気で新しい考えを受け入れないといったイメージも付きまとうだけに、そういった心配も付きまとうところだが、今回取沙汰されている“七か条”は、そんな悪しきイメージ通りといった田舎社会の嫌な空気を存分に感じさせるところ。それだけにSNS上からは「そりゃ若者は出ていくし、外から人が来ても定着しない」「そんなだから衰退するのだ」などと、町への批判が相次ぐことに。
「都会風を吹かさないよう」
「品定めされることは自然」ジジイの区長会でこんなことを決めてるアホなことやったら、そりゃ若者は出ていくし、外から人が来ても定着しないわな。
移住者に「都会風やめて」 広報誌に提言、福井・池田 | 2023/2/8 – 共同通信 https://t.co/Nd7hxTt77k
— 木下斉/ Hitoshi Kinoshita (@shoutengai) February 8, 2023
そんなだから衰退するのだ。受け入れる度量も必要。
移住者に「都会風やめて」 広報誌に提言、福井・池田 | 2023/2/8 – 共同通信 https://t.co/UvLnxJhMlt
— 大田区議会議員_おぎの稔/メタバース・議員系Vtuber (@ogino_otaku) February 8, 2023
また、なかでも違和感を抱くといった声が多いのが「都会風」という表現で、行政がこのような言葉を使うとは……といった批判とともに、それ以前に「都会風ってどんなんだろう」「そもそもなにをやると、都会風に該当するんだろうか」との声も続出している状況だ。
移住者に「都会風やめて」 広報誌に提言、福井・池田 | 2023/2/8 – 共同通信 https://t.co/r4s1spYBjW
都会風ってどんなんだろう。。。
— 芝原 三裕 (@shiba3) February 9, 2023
どひぇー、こういう「田舎風」吹かせるバカがいるから朽ち果てるのだとしか。そもそもなにをやると、都会風に該当するんだろうか。本気でわからん。「六本木で飲みてー!」と田んぼで叫ぶとか? / “移住者に「都会風やめて」 広報誌に提言、福井・池田 | 共同通信” https://t.co/a22wlLcCb9
— 深町秋生・「探偵は田園をゆく」2/22頃 (@ash0966) February 8, 2023
「都会風」って「つけびしてけむり喜ぶ田舎者」へのアンサーソング?的な表現に感じられてならない。
— ろしなんて (@roshinante) February 9, 2023
そもそもこの「○○風」だが、「役人風を吹かす」「先輩風を吹かせる」といったふうにも使われるように、その立場などを誇示して尊大な態度をとっているといった様を、嫌悪の感情あるいは侮蔑交じりに表現するといったもの。
となると、今回の“七か条”において「都会風」という表現が使われたのも、その文を考えた者たちの心中に、移住者に対してのある種の疑念や嫌悪感があったがゆえ……とも言えなくなさそう。しかも、これがいわゆる“舌足らずの表現”だったというのならまだしも、町側は「文面を変えることはない」とコメントしているだけに、もはや偽らざる本心といったところなのだろう。
町の担当者“七か条”の真意
いっぽう、今回の“七か条”に関して池田町の担当者に取材した報道によれば、「移住してから『聞いていない』『知らなかった』とならないように、池田町ってこんな町ですよ、集落ってこんなところですよ、と包み隠さずお見せする方が丁寧ではないかとの考えが区長会でまとまり、提言を出すに至りました」とのこと。
実際、元からの住民からは「移住者が共同作業に参加してくれない」という声が多かったようで、さらに移住者からは「体質が古い」というニュアンスの発言をされたこともあったと語る担当者だが、この「体質が古い」と指摘する移住者の態度が、「都会風を吹かしている」と受け取られた可能性も大いにありそうだ。
このように、今回批判が殺到している池田町だが、移住検討者に向けた特設サイトも存在するなど、それなりに移住促進には取り組んでいる模様。町側も今回の騒動を受けても、なお「移住ウエルカム、という町の政策に変わりはありません」と語っているようだが、SNS上では「こっちから願い下げ」といった趣旨の声も少なからず上がっているところ。
移住者に対し「品定めされることは自然」と言っていたのが、逆に移住検討者から品定めされる格好となってしまった池田町なのだが、とはいえ今回のような元から住む住民らと移住者との認識の違いや軋轢といったものは、池田町に限らずどこの田舎でも起こっているのは間違いのない話。
移住者と地元住民とのミスマッチがこれをきっかけに減れば……というのが池田町側の願いのようだが、つい先日も四国の限界集落に移住した人物の“失敗話”も話題となるなど、地方移住の“闇”や“リアル”がこのところ大いに取沙汰されているだけあって、近年過熱気味だった地方移住ブームの陰りに繋がることも大いに考えられそうだ。
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