fbpx

限界集落“移住失敗”報道にあがる「いきなり最高難度は無謀」との声。SNS上では“Uber Eatsも頼める”程よい田舎の地方都市探しが過熱

四国地方の山間部の限界集落に移住するも、その土地の顔役的な人物らとの関係が悪化したことがきっかけで、身に覚えのないうわさ話が出回るなどの嫌がらせを受け、最終的にその地域からの引っ越しを余儀なくされたという、いわゆる“移住失敗”談がここに来て大いに取沙汰されているようだ。

渦中の人物は、愛媛県新居浜市の別子山地域で2021年12月から約1年間、地域おこし協力隊員を務めた男性で、YouTube上で移住先での活動の様子を紹介していたのだが、22年12月には、引っ越しの原因となった地元団体とのトラブルなどを赤裸々に語る動画を公開。これが300万回以上の再生を記録するなどネット上で大きな話題となり、さらにそれを全国紙の朝日新聞が取り上げたことで、話がより拡散する展開となっている。

問題の動画内で男性は、市から課された任務の1つである「地域活動」に関して、顔役的な人物らが仕切る地元団体と対立したと語り、団体のメンバーから「われわれが地域の代表だから団体の活動以外は地域活動と認めない」「活動に協力しないなら協力隊を辞めてもらう」などと迫られたと告白。

しかし地元団体の代表は、地元紙の取材に対して「われわれの活動に参加しないのならば、団体に(男性は)必要ない」と言ったことは認めたものの、「協力隊を辞めてもらう」という発言は否定し、動画は「一方的な内容だ」だと主張。また地元自治体の担当者も、動画に関して「事実もあれば、詳細は控えるが歪曲されていると感じる点もある」と語るなど、移住者側と地元側の間には言い分の食い違いがあるようだ。

地方移住者にとにかく求められる“コミュ力”

65歳以上の高齢者が人口に占める割合が、50%を超えた集落のことを指す限界集落。2020年に総務省が公表した調査結果によると、全国には2万箇所の限界集落が存在するといい、2015年の前回調査と比べて1割ほど増えているとのこと。

さらに10年以内に集落が無人化する可能性があるとされるのが454集落、いずれ無人化する可能性があるとされるのは2,744集落にのぼるなど、事態は急ペースで深刻化している。

だが、その反面で都会に住む人々の間では、地方移住の成功例を取り上げたテレビ番組や、田舎暮らしをテーマとした出版物やネットコンテンツなどを見て掻き立てられるのか、地方でのスローライフに憧れるといった向きは多い。

今回話題となっている人物も、都内の小学校で教員を務めていたものの、コロナ禍で行動制限が多い都会暮らしに疑問を抱き、退職したうえで地域おこし協力隊に応募。妻子とともに移住してきたとのことだ。

地域おこし協力隊といえば、2009年度から総務省によって制度化されたもので、各地方自治体が募集を行い、地場産品の開発・販売・PRから農林水産業への従事、さらに地域住民の生活維持のための支援などに従事するもの。隊員の期間は1年~最長3年といったところだが、それ以上の活動継続も可能で、隊員期間中は自治体からの給与・賃金も発生し、住宅補助や活動に必要な経費も支給されるという。

そんな地元自治体によるバックアップもありつつの移住生活ということで、ただ単に住まいを移してゼロから地域生活を始めるといった者よりも、よほど地域に溶け込みやすいのかと思いきや、任期終了後に同じ地域に定住する割合は65%ほどに留まるようだ。

各種インフラや生活関連サービスが整っている都会と比べ、限界集落と呼ばれるような田舎での暮らしは、不便さを感じるシーンが多々あることとは想像に難くない。ただ、ネット上の反応をみると、地方への移住が失敗に終わることが多い大きな原因はそこではなく、やはり今回のような田舎独特の濃厚な人間関係の難しさによるところが大きいのでは、といった見方が大多数。

そのため移住する側の素養としては、とにもかくにも“コミュ力”の高さが求められるといった声も、多くあがっているところ。都会での人間関係に疲れて……というのも、田舎暮らしを始める動機としてはよく耳にするが、そういった人間は高い確率で失敗してしまうだろうというのだ。

いきなり限界集落は無謀

今回の“移住失敗”談に関しては、そういった田舎の“空気感”を少しでも知る向きからは「村社会あるある」「人がいなくなる地域にはいなくなるだけの理由がある」といった反応がほとんどなのだが、いっぽうで「地方へ移住するとしても、どうして限界集落へいきなり行った?」という声も。都会を離れ田舎での暮らしを始めるにしても、初手から最高難度である限界集落での生活というのは、どだい無理な話で無謀だというのだ。

実際、SNS上の田舎でのスローライフを漠然と夢見る層のなかでも、あまりにも田舎過ぎると今回のような失敗に陥るのは火を見るよりも明らかというわけで、どこか“程よい田舎”はないものかと情報交換も盛んに行われているようだ。

あくまで田舎暮らしなので、自然が多い環境というのはマストとして、だけど光回線が引けてUber Eatsが頼めるといった、都会的な生活サービスもそこそこ享受できる環境。それでいて、やはり町内会活動や消防団といった、田舎ほど活発になる煩わしい人間関係が存在しない土地というのが、理想として掲げる向きが多い模様。

「Uber Eatsが頼めるのはもはや都会」といった声もあるなかで、そういった条件に該当しそうということであがるのは、やはり地方の県庁所在地あたりということで、今回の話題に対しての反応でも、そういった場所を田舎暮らしの第一歩として、まずはお勧めするといった声は、かなり多くあがっている状況だ。

【関連】俳優・矢崎滋「地方ビジホ暮らし」は老後の理想形?月15万円に羨望と絶望の声

田舎暮らしがブームといわれて久しいなかで、同時に今回のようなガチの田舎ならではの失敗談を見聞きすることも増えたことで、地方移住よりも“地方都市移住”といった、いたって現実的なラインを目指す流れもできつつあるようだ。

Next: 「たぶん地方都市で十分満たされるはず…」

1 2
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー